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身を起こそうとする中、背後から鈍い音が短く2度聞こえ、振り向く。
レアールはシャルから拳を両側から喰らいそうになる所、制御していた。
表情1つ変えず、肩で息をする素振りも無い両者。
じっと見合っては、互いに一度手を解く。
透かさずレアールはシャルの胸倉を引っ掴み、脇の壁に背中から叩きつける。
凄まじい衝撃音に巨大な亀裂が壁に走り、彼女は減り込んだ。
ターシャは一驚上げ身を縮め、這いながら距離を取る。
胸倉を掴まれたままのシャルはしかし、レアールの両手を平然と握り返し、反対側の壁に激しく彼女を押し返す。
打撃音に混ざり、腹部へ膝蹴り1発。
しかし、それは瞬時に取られた。
流れで彼女の空いた片足は、レアールの手前に即刻引っ掛けられ、背後から大きく転倒。
レアールは間髪入れず彼女の両肩を引っ掴み、乱暴に立たせる。
だが引っ掴んだ腕は掴み返され、シャルはそのままレアールの両肘を上向きにへし折った。
その後、再び一気に彼女を壁に押し返す。
衝撃で廊下に断片の雨が散った。
「邪魔するな」
音声指令でシャルが放つなり、レアールの右頬に拳を入れる。
衝撃で首が大きく捻れ、床のターシャと彼女の目が合う。
悲鳴が轟く中、その首は軋み音を立てながら滑らかに定位置に戻った。
レアールは傷1つ無く、平然とシャルに向き直り、機械針を咥えたまま身構える。
再び飛び込んでくる彼女の拳を寸秒で躱す流れで、あらぬ方向にひん曲がった両肘を、リズミカルな骨格音を上げながら復旧。
屈んでいたそこにシャルの右膝が飛び込むが、瞬時に左手でホールドし、上体を起こす。
そのまま右から左頬に1発。
その手で胸倉を掴み、1度揺さぶっては壁に頭部を叩きつける。
更に左から右頬に1発。
僅かに体が横に傾いた所、大きく右横腹まで引き込み激しく屈折させ、膝蹴りを喰らわす。
しかしその体勢をシャルは利用する。
両腕をレアールの腰に回し、廊下半ばまで押し返した。
そのまま彼女は高々持ち上げられ、シャルの頭上高く弧を描き、頭頂部から後方真下へ放り投げられる。
落下と共に、床には巨大な亀裂が複数走った。
「止めてーっ!」
ターシャは目をきつく閉じたまま、人離れした行為に両耳を塞ぎながら泣き叫んだ。
そこで、両者は止まった。
頭から落下したレアールは仰向けになっていた所、すんなり起き上がる。
乱れたレザースカートを整え、流れで髪も手櫛で整え、静かに座位を取った。
そして、左右の手をじっと見つめ始めた。
それと背中合わせになるシャルは、どこか一点を凝視したまま仁王立ちで止まっている。
状況が読めず、ターシャは更に距離を取り、怯んだ。
そこへ、小刻みな摩擦音が小さく耳をくすぐる。
何かと思い、ターシャは目配せをすると、レアールに目が止まった。
彼女は、爪を擦っていた。
異常だと目を見開き、釘付けになってしまった。
気が散っていた中、突如、肩を掴まれ身が宙に浮く。
「ひゃああっ!
放してっ!止めてっ!」
再びシャルに担がれ、エレベーターに連れられる。
そんな事はお構い無しに、誰かさんは爪に夢中になったまま、こちらを振り向く事は無かった。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




