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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#06. Please wait 決定
59/189

[10]




 その建造物の前には、ちっぽけな船が到着していた。

それと同時に、奥から移動して来た彼等がゲートを開け、来客対応をし始める。




挿絵(By みてみん)




「“悪いなこんな時間に。

お宅の長が機嫌悪くしてないといいが”」




ここによく来ている様だ。

がたいの良い男と、真逆で細身の男が下船する。

彼等もまた、似た様な作業着姿で笑顔で話しているが、迎え入れる側はどうしても愛想が無い。

特に、誰かさんは。




「“ご心配無く。彼はそんな事気にしないさ。

航路や相手先の都合もある事だし。

それに貴方がたは、お得意さんだからね。

言われていたサンプルと原薬、用意してるよ”」




接し慣れている彼のアクションを、背後で建屋の壁に背を預け、ただただ無言でモニターする男。




「“こいつ新入りなんだ。

あんたにも紹介しておくよ!”」




がたいの良い客人は、連れて来た新人を指しては気さくに壁でモニターする彼に声をかける。

しかし、その彼は小さく1度頷くのみ。

それを覆う様に、作業着の彼が気さくに客に手を差し出した。




「“よろしく。

ここの研究員をしてるショーン・テイラー。

あっちの彼はビル・エジャートン。

許してやって。

どうしようもなく内気で、大人しいだけなんだ”」




巧みに接客しては、自然とその新人と握手した。

その手元にビルの目が光っていたが、特に何事も無く手は解けた。




「“お陰さんで、また新たに抗体医薬品の開発が進みそうだよ。

遺伝子治療なんかも、いずれは実験できそうだ。

タンパク質管理や生物情報の取り纏めなんかも相変わらず、どこの研究所とも比較にならないくらい質が良い。

クローズされた時はどうなるかと思ったけど、再開してもらえて安心したよ”」




「“そう言って頂けて何より。

歴史が長いから、失くすのは惜しいし。

変わらずうちの原薬が安定していて良かった。

今後も貢献できるように努めるよ。

ちょっと待ってて”」




そう言いながら、そこの建屋に入って行った。




別に渡すものもあった様で、数秒してからプラスチックボックスを手に再来する。

簡易的な事務所であり、一時的な保管庫といったところか。

流れで、持参したファイルも手渡す。




瞬きしない顔を適度に逸らす。

それは違和感無く、自然な仕草と言える動作だった。






 その横から、新入りの男がある物を突き出す。

それは、毎度お馴染みの土産だった。



「“これ、いつものだけど、好きだって聞いてるから”」



「“ありがとう!皆喜ぶよ”」



優しく受け取ると、声をやや高めに、気さくに返答してみせる。

表情があれば、より際立つだろう。



「“じゃあもう行くよ!あんたもまたな、ビル!”」



新入りもまた、愛想良く彼に手を振るのだが―



「“………気をつけてな”」



その態度は、指示通り放ったまでと言った様子。

相変わらず顔つきは終始冷酷で、目は鋭かった。




その任務は、僅か5分少々で完了した。

ショーンの今回の対応も、問題無し。











 排気の臭いに包まれながら、離れていく音と共に体は振動した。

喉の苦しみにターシャは何の抵抗も、救援を求める事もできず、涙が零れだす。



「っ!」



背中に激痛が走った。

シャルはまた、ターシャを引き摺り始める。

それはもう止まる事は無いと瞬時に悟るも、空いた片足や両腕を振り、抵抗する。



「痛いっ!放してっ!」



喉の苦しみからは徐々に解放され、力任せに彼女の腕や足を僅かに蹴るも、それを痛む様子も、焦燥すらも放たない。



「ねぇシャル、彼女自分で歩けるわよ?

放してあげたら?

ターシャ、何かしたの?」



「何かしたのはそっちでしょうがっ!

あたしは被害者よっ!どうなるの!?

あんなとこ戻りたくない!」



「そう?私、何かしたかしら…。

ドクターと話すといいわ、まだ仕事してるみたいだし。

そんな怖い所じゃないわ、ターシャ」



体勢からくる疲労にアマンダの言葉が覆い被さる事で、何をする気も起こらなくなった。

段々、直ぐ後ろを歩く彼女に目が潤む。

薬剤器具を運搬しながら同行する彼女は、真っ直ぐ行き先の玄関を見ていた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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