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すぐ脇の茂みに身を隠し、辺りに目を向ける。
よく見るとそこは、庭の様なスペースになっており、所々植木や花壇が見受けられる。
こんな地で、植物の世話を優雅にしているというのか。
つい、そんな風景にも目を凝らしてしまう。
ここへ駆けて来る最中でも、点々と花を見かけた。
アマンダが今居るこの家には、他の所よりも花がある。
彼女は駆け出しのフラワーデザイナー。
数種類のものが庭に植えられているのだが、この場に限らず色違いの共通した花がこの敷地には咲いていた。
ここにも僅かに同じものがあり、不意にその名を思い出す。
「………アス……ター……」
冷たい潮風が、ターシャから放出される熱を拭った。
こんな心境を癒すのに花で間に合うものか。
余計に妙で、頭がおかしくなってしまう。
現実を見ろと、己を何とか奮い立たせようとする。
塗り重ねる様に、意味不明な説明がループしていた。
まさか、ロボットか。
職場で使用するボディと呼ぶには生々し過ぎる、人体パーツの数々。
それらを組み立て、故人の情報を反映しているというのか。
掃除のおばさんも、先程のおじさんも、今思えば彼女と同じ、目も表情も動いていなかった様に思う。
もしやこの地に居る人は、皆そうなのか。
だが、追い掛けてきたあの恐ろしい女や男は、人間だと思う。
奴等を研究員と呼び、その奴等がロボットや薬を作っているのか。
いずれにせよ、自分や彼女がこうなるに至るまでの手段が、不明瞭でならない。
そして専門医というワードもまた、謎めいていた。
必死に思考を巡らせていると、家の中から物音がし始めた。
震える息を手で塞ぎ、身を縮め、聞き耳を立てる。
頭上の窓から、片目だけで覗いた。
先に見かけたレザー尽くしの女とはまた別の女が居る。
彼女は露出は殆ど無く、似た格好であり、落ち着いた様子。
前下がりのショートヘア。
年齢は、自分の両親くらいだろうか。
アマンダは何か指示を受けたのか、ベッドに横になり、服を開け始めるではないか。
怖くて目が潤み、勝手に首が左右に振られる。
女は黒の平たいショルダーケースを下げ、手にはタンクを持っている。
まるで水圧洗浄機を思わせる銀色のそれは、先端から盛大にミストが放たれ彼女に浴びせた。
Aster エゾギク シオンと呼んだりも
色によって違う花言葉があり
色々な色のものが拠点内に点々と咲いてたようです
花言葉は全体として
「変化」「追憶」「信じる恋」「同感」
英語としては
「多様性・変化」「忠実・貞節」「想っている」
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




