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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#06. Please wait 決定
54/189

[5]




 目の前の状況に、未だ鳥肌が止まない。

やはり夢を見ているのか。

何故、親友が目の前にいるのだ。






 あれから、軽々持ち上げられ勝手に家の中に入れられたが、堪らず転げ落ちた。

しかし乱暴も出来ず、まるで怯える動物の様に、床に崩れ落ちた状態でアマンダを見据える。

それに対し彼女は、傍のテーブルについて不思議そうにターシャを眺めている。




「ねぇいつ来たの?

ここで働いてるなんて知らなかったわ」



それは大きく胸を突く。

ここにいる事が当たり前かの様な口ぶりだ。



「サウスかウェストから来たの?」



「何それっ!?まさかあのおっかない建物の事!?」



「おっかない?どうして?何かあったの?」



彼女もまた、ターシャの発言が不思議でならない様だ。

ターシャは困惑した。

先に聞くべき事があるだろう。

なのに自然と受け答えしているこの感覚は、何だ。

混乱が混乱を呼ぶ事に耐えられず、乱暴に立ち上がり、目の前の椅子に座っては放つ。



「一体これはどういう事!?何が起きてるの!?」



アマンダは驚く様に両手をそっと胸の前に引き、数秒目を逸らしてから



「私、ドクター・ウィリアムズに起こされて、今はここで生きてるの」



「起こされた!?生きてる!?何言ってんのよっ!」



あんたは死んだ。

言わずとも表情がそれを訴える。

一方アマンダは、両頬に手を当て、肘を付き、真っ直ぐ平然とこちらを見ている。

その様子もまた、失った彼女そのものだった。




葬儀は行われた。

なのに、生きてるなどと異常な発言をしている。




ターシャは焦燥し、背凭れに激しく身を打ち付け、頭を掻き毟る。



「ここは何なの!?何してるの!?

こんなのおかしいっ…おかしいよっ!

有り得ない、帰る!帰って報せなきゃ!

あんたも帰らなきゃダメよアマンダ!

何のこのこ居座ってるの!」




亡くなった彼女の居場所は、こんな所ではない。

生きている事も有り得ないが、仮にそうであるにしてもここに居るのは違う。

一刻も早く出ようと、テーブルに身を乗り出し、慌てふためく。

しかし、そんなターシャを相変わらずの態度で見つめ、彼女は口を開いた。




「その様子だと、勤めてる訳ではなさそうね、ターシャ。

何でここに来たの?」



「あたしが聞いてるのよ!起きたらこんな所にいるのっ…」



腹立たしいあまり声を張り、困惑に溺れ突っ伏す。

落ち着けと、言い聞かせ続ける。



「寝てる間に来たの?そんな事があるのかしら…」



彼女は不思議そうに視線を落とし、小さく呟いてはどこか一点を見て、数秒考える。

顎に触れる手は直に離れ、何かを整理したのか、俯くターシャに向き直った。




「いいわ、まずここの話ね。

ここは、海洋バイオテクノロジー研究所。

海底の岩盤に躯体や柱を立て、その上に構造物を建てて出来た。

ここは比較的、他の海域よりも浅い場所なんだって。

でも、深いけどね。


 長年に渡って、生命科学を探求し続けてる所なのよ。

不治の病と言われる、様々な治癒困難とされる疾病等に対する、新薬を開発する為の研究をしてる。

人の健康に役立つ有用成分を、水棲動物や植物から生産し、主に近辺や海外に在する得意先、そして新規の共同開発者にも成果の共有をする。


以前は臨床試験もしていたそうよ。

治験って言うんだって」




顔は勝手に上がり、体が硬直してしまっていた。

そんな施設とはまるでかけ離れている場所を切り抜けて来たというのに、なぜ彼女はそんな事を言うのか。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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