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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#06. Please wait 決定
52/189

[3]




「専門医?研究員?」




 あの時、不意に宙に消し飛び、赤く染まり果てたその姿。

しかし、今そこに居るのは間違いなく彼女である。

まるで人形を思わせる可愛らしい容姿は、どういう訳かそのままで、恐ろしく美しい。



「アっ…アマっ……!?」



どうして居るの。

それ1つ聞くにも、顎が酷く震え、発声を妨げる。



「アマンダ」



軽やかで、フレンドリーな名乗りにまた、一驚を上げる。



「あ、待って、その顔…その髪…友達かしら?」



彼女はそっとしゃがみ、ターシャを数秒凝視すると、肩を指先で触れた。

堪らずその手を払い、鉄柵に力を込め必死に立ち上がるも、崩れる。

不意にその脇を支えられてしまった流れで、聢と目が合った。

ダークブラウンの親友の目が、そこにある。そして―




「ターシャ!

髪が伸びてるけど、その目と顔付き、そうね。

入って!」




彼女は部分的に、声を高く放った。

そして手を差し出すのだが、下半身が言う事を効かない。

いつまでも立ち上がらないターシャの手を軽々掴んでは、大きく手前に引いた。

その力は普通よりも強く、若干痛い。

また、冷たい。



「は、はなっ…放してっ…放してっ!」



処理できない状況に震撼は止まらない。

この事態に藻掻き続け、いつまでも動かないターシャを、アマンダは軽々膝から抱き上げた。



「ひゃああっ!」



恐怖に慌てふためくが、またしても軽やかな足取りで彼女は、出て来たちっぽけな家へターシャを連れ込んだ。

柔らかな光を灯すその家は、荒々しく息を立てる彼女を、悉く奇妙に、優しく誘った。




 







 「そんな報告なんかできる訳ないでしょうが殺されるわよっ!」



ターシャの確認を疎かにした女研究員が、震える声で叫んだ。

脇では、彼女を追いかけていた女研究員が、己の作業スペースに突っ伏していた。

連絡橋で足を崩した所、他の研究員が駆け付け、ここに連れられている。

ただ一言、今は放っておけとレイシャから告げられ、一方的に通話が切られた。

前代未聞の異常事態に、部下達は戸惑っている。



「死亡判断が付いてなかったってんなら、あいつが何かしら処分を受ける。

お前は大丈夫だろ」



ぬけぬけと発する男研究員が、安置室での確認を怠った彼女に向けて放った。



「この馬鹿!他人事!?

大体私はコード修正をしてたのよ!?

それをわざわざ中断して、搬送後確認を変わってやった挙句、備品補充までさせられて!

こんなはずじゃなかったでしょうが!

そもそも誰がすべきだったってのよ!?」



その鬼の形相は、元々その動きの担当であった彼に激しく向く。

しかし彼は、悪かったと肩を竦めながらせせら笑った。



「だが、とか言うお前も結局、碌に確認しなかったんだろ?」



彼女は血相を変え、デスクのペン立てやファイルを怒りに任せ激しく薙ぎ倒した。

デスクに拳を叩きつける音に、嘆きが混じる。



「なぁ…シャルは判断できなかったって事か…?」



荒げる呼吸だけが、空間を震わせた。

研究員達の表情は曇る。



「いくらあいつがしくじったって、Rは死亡判断が出来る…

だがあいつは、気付かなかった…

月次点検はつい最近だぞ……」



時系列を遡りながら男は困惑の渦に巻き込まれる。

月次チェックの対応をしたのは彼だ。

己が招いた最悪のミスなのか。

その手は次第に震え、顔面は蒼白になる。



「もう起きちまった……判断を待て……」



監督はしかし、険しい表情に溜め息を付く。






その後、淀む空気はしばらくして散り散りになった。

そこには、突っ伏す彼女と、焦燥を滾らせる彼女。

そして本来、安置室での確認担当であった彼の、3人だけとなった。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[良い点] …アマンダも良い。でも…やっぱりターシャが良い。 [気になる点] …君がお疲れではないかと心配だ。 [一言] 今日はパブから、ターシャ、追手サイド。 流れるような展開はやはり得意とするのか…
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