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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#06. Please wait 決定
51/189

[2]




 「こんな時間に偉く懸命だな。

俺の娘と目鼻立ちが似てる。

仕事がよく出来るんだろうが無理するなよ。

そう言う人間は、大抵助けてと言わない。

それに端が気付いた時には、手遅れになってたりもする。

本音や話は、我がの為に適度に誰かに聞いてもらう事だ。

あの子は上手くやれてるかなぁ」



「あの、違うんです!」



これでは、掃除の女性と同じ流れになってしまう気がした。





「あたしは関係者じゃない。

だからここから出たいの!」



男は数秒、ターシャを見てから両手を腰にやる。

穴が開く程彼女を見つめては、首を傾げる。





「ああ分かった。

通りで顔を知らない訳か。

研究資料の受け取りなら、一旦船着き場で待ってろ。

来客は、そう言う規則だ」





何故、その様な返答になるのだろうか。

出会う人との受け答えが、上手く成立しない。

先程の微生物の採取とやらは、何を意味するのか。



ターシャは恐怖に後退る。

目前の彼は結局、踵を返し、家の中へ姿を消してしまった。



立ち尽くす中それを見届けては、その場を一気に駆けた。






 敷地の縁に沿って走り続けていると、疲労が突如、足を止めた。

こんな孤島から出る手段は限られている。

このままでは、どこに居ようと見つかる。




気持ちが急き始めると、自然としゃがみ込む。

来客や船着き場と言っていた。

そこに行けば、外部との接点が取れるだろうか。

分からず、またも不安が込み上げた。

ついそこの鉄柵に手を預け、顔を突っ伏す。





「助けてっ…」





遺体、ゾンビ、猿。

一体全体、何故そう呼ばれるのか。

この通り生きているにも関わらず、そうある事に動揺されてしまう世界。

大量の気持ち悪いロボットに、金属の手足に大量の目玉、妙な粉末に異臭、溢れる分裂した人間のリアルなパーツ。




 その映像が堪らず不快で、胃から苦い物が僅かに上がり、海に吐き出した。

黒過ぎるそこに歪む、自分の顔。

(はな)も涙も、次第に溢れ出た。

過る両親、そしてアマンダ。

どうしようもなく会いたい衝動に、心臓は捥がれそうになり、激痛の声が零れた時だった―





「誰?」



「きゃあっ!」



声と同時に叫び、振り返る。

瞬時、その身は凍てつき硬直した。






 こんな夜に、そのボルドーのパーティードレスは酷く映えた。

揺れるウェーブがかったココナッツブラウンの長髪。

背は同じくらいの、まるで人形の様に可愛い。



「はっ…はぁっ!?」



ターシャは鉄柵に激しく背を叩きつけては、腰を抜かす。

開いたままの口から零れる唾液も構わず、呼吸を荒げ、瞼は完全に失った。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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