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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#06. Please wait 決定
50/189

[1]




 ビル内での大騒ぎが嘘の様に、ここは静かで、極めて穏やかだった。

追手が来なくなったこの隙に、ターシャは目を拭い、強く一息吐くと、辺りを警戒しながら早歩きする。






 整えられた林立する木々や植物。

今が何時なのかは分からないが、空はインディゴに染まりつつある。

パブがあった方面とは違い、こちら側には家屋が並んでいた。




 敷地内の端に沿って進んでいると、目に飛び込んだのは、見渡した際に確認できた白い土台を持つ噴水。

連絡橋に据えられている照明と同様か、吹き上がる水を淡い白に灯している。




 そこで目に留まったのは、1人の男。

咄嗟に家屋の物陰に身を隠し、様子を窺う。






 清掃しているのか、網で浮遊物を掬い続けている。

その隣には剪定鋏が立てかけられていた。

ここ一帯の手入れをしているのだろうか。




 そこの広場はまるで、週末に家族が寄って集る場所そのものにすら思える。

足先から身震いし、目を背ける。

先程より少々冷静になったとは言え、未だ情報処理ができず、不安は膨らむばかりだ。

髪を雑に掻き、険しい表情をしていた時、迫る足音がした。

噴水の男がこちらへ向かって来る。




身を引っ込め口を塞いでは、しゃがんだ。

気配を消そうとしたが―





「誰だ?」





肩が大きく上がり、震えながら見上げると、男の影がふと彼女を覆った。

どこででも見かける中年男性。

髭が生え、中肉中背。

灰色の作業着に剪定道具をベルトに固定し、網を手にこちらを見下ろしていた。



「研究員か?」



そのワードが奇妙でならず、思い切って立ち上がる。



「あの!ここは何!?

あたしは何でこんな所に居るの!?」



彼に疑問をぶつけると、数秒、間が空いた。



「何って?バイオ研究をしているんだろう?

知らない顔だ、新人か。

こんな所で微生物の採取か?」



またも意味が分からない。



「何なの、それ……家に帰りたいの!

どう連絡したらいいの!?」



「あそこが家じゃないのか?俺はここが家だけど。

連絡か。電話は支給されてないのか?

ここで働く者は皆そうだが、無いなら上に相談してみろ」



彼は、奥に聳え立つ1基を見上げたり、手前の家屋を指したりしながら話す。




ターシャは目を見開き、口を開けたまま、首は勝手に横に振られている。

欲しい答えが出てこず、恐ろしくてならなかった。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[一言] ご機嫌よう、terra.先生。 偶然にも一番乗りはterra.先生だったようです。 日頃から親しくして下さり、この良きスタートを切れた事に、心より御礼申し上げます。 暑い日が続きますが…
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