表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#01. Access 搬送
5/189

[3]




「新型でしょ?」


R(アール)だ」


「は!?」


極めて淡白な返答につい声を上げ、咄嗟に口を噤む。


 逃げる様にエレベーターに乗り込むと、クローズボタンを乱暴に連打した。





「センサー反応は1度切りだ。複数押したところで効果はない」


「分かってる。そこじゃない。

何で新型じゃないの。彼は何て?何?誰か変換予定?」


System(システム) Rebirth(リバース)及びSystem Real(リアル)/Ray(レイ)製作スタッフを、

トップとレイシャ補佐官の他にもう1人立ち上げる為に、

この遺体で試験をする」


レアールが少々高いセクシーな声で、淡々と説明した。


「ああ…そう……」




間も無く自分の通過幅を認識したビルが先行する。

担架の幅を認識したタイミングでそれに続くレアール。





 レイシャは半ば飽き飽きしながらも納得していた。



アンドロイド製作に本格的に当たる事ができるのは、拠点のトップである博士とレイシャのみ。

その彼女が現在、拠点外に居る事が向こうにとってどれ程ハードな状況なのか。

そんな事は派遣される前から明確だった。




 取り入れる予定の新技術は整っていても、未だ着手する気が湧かないのは、AIの未熟さに引っ掛かっているのだろう。

不可能と言われている心、空気を察知する能力の反映。

生きた人間にとってすら無限の課題に値する項目に、今も尚、時間と労力を費やし奮励努力している。




彼等は、何としてでも可能にしたい。




レイシャは顔を顰め、俯きながら重たい息を吐いた。




 組織が最終的に目指すのは、人間と呼んで然るべきアンドロイドの誕生。

聞こえこそ普通で、極めて有り触れている。




だが彼等が意味するそれは、進化を兼ねた復活であり、再生だ。




 その為に段階を追って、やっと使いこなせるまでに至ったのがSystem Rebirth、通称R。

今目の前に居る彼等と、拠点に残るもう2体だ。

この型の量産を叶えるのにも、かなりの時間を要した。

新型も、いくらRの派生モデルとは言え、そう容易には進まないだろう。




 さっさと持ち場に復帰して高性能AI技術開発の続きをしたい。

この派遣中に得た人間のデータといい、AIそのものの資料といい、揃えられる新しい情報は十分入手できた。

後は持ち帰ってトップを奮い立たせるのみ。






 遺体を乗せた担架は、ビルにより開け放たれたバックドアから収められる。


「ご苦労様。気を付けて」


「誰に言ってる」


背中で零しながら運転席にビルが乗り込んだ。



レイシャは足早にその真横へ移動し、窓ガラスを指で叩いた。

エンジン音が鳴り、目が合う程度に開いたそこから彼女を見る。

サングラスの向こうで細められたダークブラウンの瞳が、車内灯の光を僅かに受けて光った。


「さっさとそっちに帰らせて。

後ビル、あんたのそういう所、修正してもらいなさい。

って事、彼に言っておいて」


「女が付かないからか」


「あら気にしてるの?ならまだ望みはあるわねっ―


言い切ると同時に車は発進され少々仰け反った。

車はあっさり街の暗闇に消える。





 時刻を見ると10分も経過していない。

束の間であれ、仲間との密会はやはり心地良い。



後は一時的に止めたカメラの映像確認を終えれば、宿直のフリはここまでだ。

さっさと帰宅し、新型開発に向けての思考を巡らせようと、颯爽とその場を去った。










MECHANICAL CITY



本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ