表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#05. Error 誤搬送
48/189

[20]




彼は元バーテンダーらしい。

体格は膨よかで若干の色白。

しかし黒一択の格好の影響で、僅かに引き締まっても見える。

その頃の腕前がどうだったのかは皆無だが、技術の反映はまずまずといった所である。




以前はどうも、カクテルの濃度を全て同等にしてしまい、困り果てていた。

オプションが効かなくてどうすると、ああだこうだやかましくコード内容を交わし続けるのもまた、彼等にとっては最高の時間だった。






挿絵(By みてみん)




 メンテナンスから無事戻って来た彼は、早速オーダーを受けたカクテルをビルドやシェイクしたりするのだが―




「え。

何かもっと凄い事してくれるんじゃなかったの?」



「フレアバーテンディングのプログラムは間に合わなかった、と」



店内入り口の柱に背を預け、レアールが報告を入れる。



「何だそれ!?

コピーするだけにしてやっただろ!?」



ショットガンカクテルを片手にぼやく男。

そのプログラミングを依頼していた張本人だった。



「厳密には、コードが複雑過ぎてやる気が出ない。

てめぇでやりやがれ阿保が、と」



「…あっそ」



失笑しながら、大層つまらない表情でそれを口に流し込んだ。

3種のウィスキーが入り混じり、喉から胃へ一気に重く流れ落ち、いつまでも喉や食道を焼き続ける。

高い度数を何発も入れられるプログラマーの彼は、その間でも平気でコードを巡らせる強者だ。






「相変わらずド偉いスキルだってのに、何でここに居るんだ?

自分から売り込んだのか?」



バイオ研究専門の男が訊ねると、その彼はつまらなそうに鼻を鳴らして言った。



「んな訳。

気付きゃ血が流れてる様な生き方してた俺に、自分を売り込む気力なんざ無ぇ」



そう発言する彼の露出する箇所には、点々と怪我の跡が在る。

受けたものが大半だろうが、自傷行為と取れるものもあった。



「あああちらさんは大層お偉いもんだぜ。

出しゃばりゃぁ叩かれる。

いざ発揮すりゃぁ手柄横取り。

反発すりゃぁ暴力。

察に乗り込んでも証拠がねぇだ何だだ。

それを集める最中バレてああもう…一生やってろ。

気付きゃ縁の上だの、レールの上だのに立ってた。

とっとと殺せってな。

けどそれすらできねぇ。笑っちまうだろう…。

今思えばよく、あそこまで他人の名誉の為に自分を抑制してたもんだぜ。

人生どうでもいいと思える十分な理由だ。

向こうの空気も、顔も、まっぴらだ。

俺はこっから出ない。そう言ってある」




途中、その目の色は失われていたが、言い終わりには今の己に戻っている。

手にしていた酒を一気に流し込み、もう過ぎた事とでも言う様に、どこかを見て小さく笑った。






 バーテンダーはただただ無言でオーダーを聞き入れ、改善された技術が正確に反映されている事を証明し続ける。

3つの全く違うグラスを淡々と並べる前で、シェイカー、メジャーカップが丁寧に操られ、差し込む照明を弾いた。

立つステア音は、忘れられがちに流れるジャズに混じる。

直に3人分の全く違うカクテルが注がれ、以前に無かった手早さに女達は圧倒する。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 良い店だ。 [気になる点] そうだな…冷えたモヒート、一杯。 [一言] 普通に僕好みの店だな。 色女、眺めにきたよ……。 ジャスも合うなぁ……。 何処見てるって? ターシャ? あぁ、気に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ