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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#05. Error 誤搬送
47/189

[19]




 数十人と住み着く拠点の憩いの場も、博士から設置許可が下りた。

渋々だったそれは大方、酒なんて部屋でもカフェでも飲めるのに、といった所か。




居場所が限定されているからこそ、部下達は別の娯楽スペースが欲しくなった様だ。

元々空き倉庫だった所を、大工のRと手分けして改造した。

しかし、出来上がったものの、誰も彼と酌み交わした事は無かった。






 濃い電球色が仄暗く灯るパブ。

木彫のテーブルとカウンターが設置され、数々のアルコールが壁に並ぶ。

低めの音量で合間を縫う軽やかなジャズは途端、各スマートフォンに飛び込んだ緊急連絡の反応に掻き消される。



「遺体脱走!?」



部下に拡散された情報は、補佐官からだった。



「な?あいつは性格的に向いてねぇって。

ハリス様もしくじったな。

あの骨格オタクには、大人しくパーツの量産させてりゃよかったんだ。

俺の勝ち」



勝手に賭けの対象にされていた成り済まし中の仲間。

負けた連中は渋々デジタルマネーを送信している。



「ここらに居んの?指示無いけど、探すべきじゃ?」



「放っとけ。出れっこねぇ、そう書いてある。

保安官が連れてくさ」



ウィスキーのロックを片手に、男はノートパソコンと睨み合っている。



「バイオ実験の餌にすりゃいい。

それか治験モニターか!懐かしいぜ」



臨床開発モニターの経験も兼ねたバイオテクノロジー研究に長けた男は、呑気にスクリュードライバーを流し込んでいる。



「こうなる意味が分かんないわね。

死亡判断どうしたのよ。もしやダミーに下した?」



冷えたモヒートを口にしながら、女は言った。



「まさか見越した事が実際に起こるとはな。

手ぇ抜かなくて良かった」



隣でキーボードを叩き続けながら言う男は、この拠点で唯一のハッカーであり、酒に溺れる事も知らずそれをやってのける優れ者。

どうも賭けに勝利した男の口座を覗く実験中か。



「誰が仕切って作ってると思ってる。

余裕で通過だ」



直に飲み切るウォッカトニックを片手に、元造形師の男が悠々と放った。



「トップ、流石にキレるんじゃない」



「キレるなら補佐官だろう。

トップは想像つかねぇ。

こないだのボヤでも、壊すなよって一言だけだったんだろ。

まぁ顔はおっかなかったらしいがな!

Rayの施術の時に会ったけどすげぇぜ。

パーツ位置も瞼の仕込みも1発で合わせんだ。

前日の顔面データ見るだけでだぞ。

理由聞いたらただ一言、計算。

これで声が聞けたのは3回目だ!」



ハッカーの男は博士に非常に興味があるらしく、機会があれば無理にでも接する様だ。






 そこへレアールが入店した。

彼女はメンテが完了した男のRを率いると、その場が一斉に歓喜の声で埋もれた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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