表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#05. Error 誤搬送
46/189

[18]




 隙間から辺りを窺うと、そこは橋から見下ろした中庭で、4基に囲まれた麓である。




夜の潮風に、芝生が揺れる音が立つ。




頭上を見ると、7本の連絡橋が淡い白光に縁取られ、各々の塔に渡されている。

状況と不釣り合いな美しさに、驚懼(きょうく)した。






 自然と立ち上がり、辺りを見渡す。




石畳が中央を円形に占め、そこから4基の入り口に向かって、真っ直ぐ通路になって伸びている。

隣には、一番低い1基が灯も無く佇む。

その向こう側に広がる光景に、ターシャは目を奪われた。




 点々と、家らしき窓から零れる電球色や、街灯が窺える。

怪しむ様に目を細め、勝手にその世界へ引き寄せられていく。






 波の音が、延々と耳に入って来る。

私生活でもこんなに近くで海を感じる事は無い。

これは、やはり何かの間違いか。

ただの悪夢なのだろうか。






 肌寒さを堪えながら、目にくっきりと飛び込んだ広場に驚嘆を漏らす。



「何………ここ……」






 広々とした円形の敷地を、鉄柵が囲っている。

その内側に、小さな家屋が点々と存在していた。

通路は石畳が大半を占め、その隙間から芝生が顔を出している。

実に生々しい生活感があった。

誰かが確実にそこで生きている気配が漂い、鳥肌が立つ。




所々には植物もあり、自分の住む街の穏やかさと似た様子を思わせる。

中央には、下から淡い白光を灯された噴水までもがある。




敷地の更に奥の縁には、不気味なコンクリートの立方体をした建造物があった。

その横には、この敷地を囲う鉄柵よりもやや高目に作られたゲートが立つ。

その向こうには、船2隻分程の広さの船着き場が、街灯と共に見えた。






 視線は再び、限りなく広がる漆黒の大海原に向く。

やはり、ここ以外に陸は、どこにも無い。



「ああ……」



混乱は再び起こる。

目が潤み、勝手に膝が落ちた。

ここは明るみだ。

僅かに残る正気を頼りに、直ぐ傍で林立する木々と、合間の茂みに身を隠す。




震撼させてくる環境に目を閉じ、何とか呼吸を整えようとする。

怖い。

精神が安定せず、膝に顔を埋め嗚咽する。

誰かに連絡する心積もりなど、今はあっさり崩れてしまっていた。

現状が、次々と不安へと誘い続けた。






 そんな中、微かに声が聞こえた。

何やら賑わうそれに顔を上げた時、更に近くで足音がした。

咄嗟に木の裏で身を縮め、観察する。






 視線の先には、その姿をレザーで占めたスレンダーな茶髪の女が居た。

露出した手足が寒々しいが、全く気にしていない様子でヒールを鳴らしている。




彼女が率いていたのは、少々恰幅のいい背の低い男だった。

ターシャは眉を顰める。

彼等が向かう先は、何やら店を思わせる小さな建屋。

その窓に目を凝らすと、青や赤の照明が点々と伺える。




 ターシャは、2人がその建屋に向かってある程度距離を取った所、忍び足で尾行した。






 男を率いていた女が、辿り着いたそこのガラス扉を開けた。

一気に騒ぎ声が立つそこは、明らかにパブだった。




少々身を引くと、そこから興奮する声が上がり、賑やかな場が直ぐ想像できる。

2人はそのまま中へ消えた。




見つかるのは御免だと、ターシャは踵を返し、反対側のエリアに向かった。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ