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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#05. Error 誤搬送
43/189

[15]




 赤の警報ランプが、点々と薄暗い廊下を照らしている。

しかし誰かが行き交う訳ではなく、無人だった。




更に首を出しては、左右を確認する。

固唾を呑んだ。

喉はずっと、小刻みに震えている。




長く伸びる廊下の先は、明るい。

ドアを開け、それに向かって駆けた。






 咽ると共に嗚咽も響く。

事態に心底パニックしながら、結んでいた布が落ちてくるのを押さえ、只管床を蹴り続けた。

脳裏には先程の情景が焼き付き、癇癪を起こしそうになる。




 そこへ、後方から激しい解放音がした。

不意に叫ぶと、壁の赤い警報ランプに目が眩む。

視界を雑に擦り、尚も進み続ける。




ヒールの音は、徐々にこちらへ迫って来た。






 間も無く、正面にガラス扉が現れた。

廊下を確認した際に見えた光は、ここからのものだった。

背後からは段々と荒い息遣いが近付いて来る。

追い付かれまいと、力を振り絞り全力疾走する。




突如漲る力は、不思議でならなかった。

まるで誰かに押されている様な感覚に陥り、ガラス扉からの光に安堵し始める。




 手を伸ばし、ドアハンドルを握ると肩から全体重を掛け、押した。

隙間風が吹き込み、濡れる全身が一気に冷え、髪は激しく後方へ靡く。

向かい風に負けじと、全体重をかけ力一杯押し、身幅が確保できると勢いよく飛び出した。






 数歩、前のめりによろけては姿勢を保ち、絶句する。




白い照明が両脇に等間隔で据えられ、通路を灯していた。

正面には暗いビルが立っている。

隣には、その半分程に当たる1基と、同じ高層ビルが1基聳え立つ。




 彼女は1周見渡した。




今自分が居る同じ橋で、4基を繋げている。

真下を窺うと、中庭と思われる芝生と石畳の広場があった。

そこでも、点々と淡い街灯が闇を照らしている。

見た事の無い光景に、強風に揺られながら唖然としてしまう。






挿絵(By みてみん)






 遥か先まで広がる真っ黒な大海原に目を疑った。

咄嗟に橋の手摺りを掴み、慄き、呼吸が小刻みになる。



「なっ…なんっ…なのっ…ここっ………」



吹き付けるビル風が寒く、足先から凍える。

肌は瞬時にザラつき、両腕を抱え身を窄めては、前屈みになる。






 そこへ、緩やかなヒールの音がした。

それに目を向けると、震える足は、まだ動けると言わんばかりに大きく後退りする。



「その格好…お似合いだわねぇ…!」



追手は息切れする中、ターシャに不気味な笑みを見せ語気を強めた。



「植物人間なんて冗談でしょ!?

ありえない、何が目的?

向こうからの潜入?なら大失敗ねぇ!」



詰め寄る女の顔は汗で光り、足元からの照明で悪魔の様な形相を際立てる。

言葉に詰まるターシャは、その血走る目に釘付けになるも、後退る足はまだ、止まらなかった。






 瞬時、大きく踵を返すと、数メートル程先の同じ扉に向かって疾走する。

追手は彼女の敏捷さに舌打ちするも、然程慌てなかった。




不意に白衣のポケットで振動が持続する。

鼓動が一気に高まり始めた。

相手は分かっている。

冷や汗が滝の如く湧き出ては、口から心臓が出そうになる。

もう、何の言い訳も出来ない。

止まないそれをとうとう取り出しては、震える手で耳に当てる。



「………了解…」



緊張の糸は解けた。

指示は意外なもので、秒で通話が断たれる。




女は疲弊し、膝から崩れ落ちた。

橋で根を張る様に佇み、しばらく闇夜を見上げた。




そう、どの道あのゾンビは、ここから出る事はできない。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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