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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#05. Error 誤搬送
42/189

[14]




【Warning】

※人体パーツ描写

 表現により、不快感を催す場合があります。







 今度は先程の空間よりも僅かに薄暗いが、状況は然程変わらない。

何が鼻を突くのか、時に嗚咽が出る臭いは足をよろめかせる。




 横からロボットがまたも彼女にぶち当たっては、通過する。




運搬物が衝撃で僅かに上下したが、その際に見えたのは薄橙色の生地の様な、何か。




ここはゴムに近い臭いも漂い、相変わらずの視界からもだが、兎に角吐き気を催す。

目を伏せながら、先程見渡した際に確認できた、奥の左横ドアに向かって前進していく。






「っ!」



左から箱が激突し、転倒した。

零れ落ちたのはビニール袋の数々。

黒や白、その中は妙に膨れ、柔らかさを見せる。

液体か、何かしらの固形か、分からないが脛に触れたその表面は妙に温い。



「嫌あああっ!助けて誰かっ!」



泣き叫びながらそれを蹴った時、結び目の隙間からドス黒い液が床に細い線を描いた。

それに素っ頓狂な声を上げ、滑りながら立ち上がると重いロボットの体を乱暴に押し退け、駆けた。






 正面からは、セメント袋に似た物が複数積み重ねられ、こちらに向かってくる。

絶叫は轟き、それを激しく躱した際に一袋が落ちた。




紙製だった為に、ターシャの衝突した手先で切開されては、真っ白な粉末が舞う。

咳き込む中、目に留まった半端な表記の頭にはCとあった。

床一面に広がるそれが、慌ただしく動く自分の足により引き延ばされ、時に粒を感じ、痛みが走る。






 入り組むロボット達を押し退け続け、対面したのはステンレス台。

その向こうには窓があり、2つの人影が見え、咄嗟にしゃがんでは目を凝らす。






 複数並ぶ台に露わになるのは、部分的に仕上がる骸骨を思わせるパーツ類に、細長い木芯の数々。

更に横に目を向けると、2体のロボットが、別の袋と先程の白い粉末を巨大なステンレスバケツに大量に混ぜ、その空間を一層白く濁らせていた。

顔は引き攣り、掠れた声が漏れる。






 反対側から箱が重々しく下ろされる音がした。

またも、先程見た布の様な物が引き出される。

白や薄橙、小麦色と、まるで皮膚を思わせる柔らかい生地。




両手を頬にヒステリックな叫声が上がるも、密集して作業するロボット達に吸収される。




挙句の果てに人影が行き交う窓から、生々しい手や足が一瞬、見え隠れした。




発狂しては目を伏せ、激しく床を蹴り、目的のドアに飛び付いた。

大量の手汗でノブは滑り、荒くなる息が動きを妨げ不意に前屈みになる。






 そこへ、物陰が頭上を覆った。

咄嗟に顔を上げると、透明の収納ボックスを抱えたそれは接近して来る。

目がジワジワ広がり、顎が鳴る。

一纏めになった複数のガラス容器に揺れる大量の視線に、大腿が湿気始める。



「ぎゃああああっー!」



一滑りし、ドアを激しく開け放った。

ホルマリンに揺れる大量の眼球を背に、やっと現れた階段から激しく転げ落ち、踊り場に全身を激しく強打した。






 ドアがそっと閉まると、すっかり辺りを包んだ闇は、一時的な安心と静寂をくれた。

嗚咽と泣き声だけが響く、狭い空間。

酷い道を通過してきたが、追手はまだ来るだろう。

体は湿り、痙攣する手足。

上手く立ち上がれない。

そしてどうしようもなく、痛い。

気付かず負った細かい傷までが、今になって疼く。




 床を這いつくばっては、そのまま階段を下った。

また、ドアがある。

何階かも分からない。

下まで降りた方がいいのだろうか、追手を巻く為にそのドアを開けるべきか。



「もうっ……出してっ…」



溢れる涙で視界が一気にぼやけるが、逃げねばならない。

ターシャはそのドアに手を付き、壁にも力を加え、立ち上がる。

整わない呼吸の中、無理矢理空気を吸い込み、吐く。




そして、開けた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[一言] いろいろなものがいっぱいですね(汗) わけもわからないとこで目覚めて化け物呼ばわりされた上にこんないろんなホラー素材見せられる状況になったら…… うん、パニックですね。 ターシャはどう…
[一言] ターシャ、こっちだっ!!ww←勝手に乱入w スリリングでスピード感があるね。 次から次へとスラスラ読んでしまった。 しかし、パーツがバラなんて。 思っていたのと、少し創りが違うようですね。…
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