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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#05. Error 誤搬送
41/189

[13]




 悲鳴を上げるなり真横から1体、ターシャにぶつかる。

彼女は足の力が抜け、崩れ落ち、去るそれに震える目を向ける。

続く1体もまた、鉄棒の束を横に抱えては床に転ぶ彼女を気にも留めず、鈍く光る銀の足で只管前進し、去る。




 後方のドアが派手に開け放たれた。

追手の怒りに焦燥する様を捉えた時、上がる息を整える間も無くターシャは立ち上がる。

辿々しい足取りで、大量のロボットの渦の合間を無理矢理、強引に縫い進んだ。




「この猿!止まんなさいよ!」



怒号を上げ、重たいロボット達を激しく脇に必死に退かしながら、目前の脱走者を追い続ける。






 悍ましいロボットが入り組む中の突進は困難だった。

まるで流れるプールを逆走するかの様に、ロボットの進む力にどうしても敵わず、押され続ける。

それらにはまるで、自分が見えていないのか。

1つの目的に夢中になっている様だ。




気味悪い状況に震えながらも、徐々に近付く正面のドアに向かって、只管間を縫う。

顧みる余裕は無い。

しかし、罵声はすぐそこまで来ていた。



「助けて!」



不意に零れる声に、反応する者は居ない。

一体ここは何なのか。

どうして自分は、遺体だのゾンビだのと呼ばれるのか。

理解不能な事態に対する怖気は増幅する。






 左から来た1体と激しく衝突し、何かが落下した。

軽い音は細かく、瞬く間に散らばる。

進路を遮る程の大きな物体を運搬し続けるロボットの群れの中、唯一それは、小さな箱を運んでいた。

またも倒れたターシャの手に落下物が触れ、目が合った。



「きゃあああああっー!」



瞳孔だけの、虹彩に色が無い目が、床一面に散らばっていた。






 堪らず反射的に立ち上がると力は雑に放たれ、ロボット達の流れも他所に衝突しながら、ドアへ突進する。




乱暴に落とされた運搬物を、ロボットは丁寧に拾い始めた。

その屈んだ姿勢に追手は半端に遮られ、苛立ちは頂点に達し、鋭い金切り声を上げる。






 ターシャはやっと扉近くまで駆け付けると、再び遮られる。



「どいてどいてっ!」



行く手を阻んだ運搬物は横長で、2体掛かりで通過していく。

中は金属でできた手足が嵩張り、進む軋み音と共に重い音を立て続ける。

それにまた一驚上げ、咄嗟に屈み、真下を這って潜る。




1体がそれに足を取られ、運搬物を落とした。

その拍子に相方も派手に手を滑らせ、1本の手が落ち、それが彼女の足に触れる。

涙ぐみ発狂すると、それを乱暴に蹴り飛ばした。




そのまま別の1体の足にそれが衝突すると、あっさり拾い上げられる。




「何て事してくれんのよ貴重品だってのに!」



もたもたする追手の怒号が飛んだ時、麻痺しかかる手がやっとドアノブに掛かると、四つん這いで飛び出した。






 刹那、妙な薬品と異臭に自然と鼻を覆う。




出口ではなかった。

視界に飛び込んだ最悪の空間に、彼女はまたも悲鳴を上げた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。





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