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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#05. Error 誤搬送
37/189

[9]




 久しぶりの明かりに、開いた目はすぐ細くなる。




その隙間から観察する限り、辺りは異様に白い。

窓は無く、脇にカーテンすら無い。

背中がやけに冷たく、硬い。

肌には半端に被さる何かが、僅かに動いた際に乾いた音を立てた。





 状況がよく分からないまま、首を起こすと突拍子もない悲鳴が上がった。





黒い寝袋の様な物が体の両側に広がり、下半身を半端に覆っている他、何も纏っていない。

足先から頂点まで、まるで一気に電流が迸ったかの様に震え上がった。

漂う微かな薬品の臭い。

自分以外に誰も居ない奇妙な部屋。





 隣には空のステンレス製の台。

それを目に、自分がその上に居る事を認識した。




上体を起こすとフラつき、咄嗟に左に捻れ体を支える。

しかしそこに付いた右手に上手く力が入らず、派手に転落した。



「たっ…」



冷えた床に四つん這いになると、一緒に落ちた黒い袋を慌てて引っ張り、体を隠す。



「……病院?」



誰かを呼ぶにも手段が見当たらない。

隣の台に手を付き、立ち上がろうとするも、また膝を付く。

しばらくまともに動かしていなかった足に、思う様に力が入らない。

だが、そうも言っていられない。




表情を険しくさせ、持っていた黒い袋を一度放し、両腕を台に付いては最大限の力を絞り出す。

ただ立つだけの事が辛く、体が重い。

しかし徐々に体は持ち上がり、気張る声は勝手に漏れ、次第に大きくなる。

まるで崖から上がる様に、台の向こう側へ手を伸ばし、縁を掴んだ。





 上体を台に預け、屈した姿勢で、彼女は半端な立位を必死に保つ。

上がる息を一旦整えながら、壁に目を這わせていく。





 白が広がる空間で、不安に息を震わせていると、ドアを見つけた。

その横には受話器が据え付けられている。

それに目が開くと、徐々に上体を起こし、ほんの僅かな歩幅で伝い歩きし始める。





 右足にかかった黒い袋に視線を下ろすと、バランスを慎重に保ちながらそれを拾い上げ、前を覆う。

誰かと会う前にせめて着る物が欲しいと、更に台の下や周囲に目を向けていく。





 そしてやっと、段ボールが見つかった。

向かいに並ぶ台の足元を目指して、通路まで伝い歩きする。

ガクガクする足は言う事聞かず、苛立ち、仕方なく四つん這いになると、全身震わせながら冷たい床を進む。

寒気も込み上げてきた。





 その蓋を開けると、黒いシーツの様な物がただ入っているだけで服は見当たらない。

それでも無いよりはと、引っ張り出す。

喉の奥から震えながら、誰か来ないかと時折ドアに目を向けた。




物音1つしない空間に不安が増幅する一方、2枚のシーツを手にする。

大きいそれを2つ折りにし、上半身、腰から下と分けて結ぶ。






 体を隠せた事に安堵するも、まだ状況は読めない。




再び床を這い、台の足元からそっとドアの方を覗く。

人が来る気配が無く、あの受話器を取るしかなさそうだ。

それに向かって勝手に手足が急ぎ始める。




ほんの僅かだが、這う力が先程よりも上がった。











MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[一言] ターシャ!? 死んでなかったんすか!!? でなくてもすごい重傷だったはず…… ターシャの身に何が起きたんでしょう!?
[良い点] ターシャーーーッ!! [気になる点] 急いで、ターシャーーー!! 続きが気になるに決まってる。 [一言] はわゎ…これはスリリングな展開。 ハラハラしてしまぃすね。 服が…wwサービスです…
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