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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#05. Error 誤搬送
36/189

[8]




 深夜1時。

ボートは猛スピードで海面を突っ切っている。

シャルは半ばで本部からの無線を受信し、到着予定時刻を告げた。

戻りも再びSouth Gate。




 正面に拠点の輪郭と赤い照明が露わになった時、緩やかにカーブを描いて目的地へ向かう。




 エンジンが静まると、ゲートは迫り上がった。

指示を受けた2体のゼロが担架を脇に、シャルを見据えている。




ボートが徐々に前進しては停まり、後部席に横たわる納体袋を抱えた。

近寄る2体にそれを渡すと、相変わらずの軋み音と共にそれごと消えていく。




 そこへ軽やかなヒールの音が近付いて来た。

1人の研究員が2体とすれ違うと、ゲート内船着き場に顔を覗かせる。



「おかえり。ご苦労様」



「無事に連れて来た」



「ええ、今擦れ違った。あんたも上がんな」



シャルはレザージャケットを脱ぎながら、奥へ消え去った遺体と研究員の後をゆっくりと追った。






 担架が安置室に到着すると、2体は研究員と入れ替わり、持ち場に消えた。

佇む納体袋は風と水で冷え、少々湿っている。




 彼女はジッパーを開けると、データ通りの女性と対面した。

医療用手袋を填め、適当な手付きで髪や手、足に触れる。



「本当、若い子ばっか。トップって案外エロいのね」



研究員は、見ていてあまり可愛気が無いと目を細め、肩を竦める。

活気をどこか感じ、少々童顔の女性は今にも起き上がりそうだ。

手にしているバインダーに綴じられたデータと実物を照らし合わせては、ボールペンを走らせる。






 そこへ、白衣のポケットが小刻みに振動した。

彼女はペンを納め、スマートフォンに出る。



「何。…安置室。シャルが運んできた子見てんの」



眠るその姿を背に、隣に据えられた別のステンレス台に片手で体重をかけ、気怠そうに話しを続ける。



「いいけどさっさとこっち変わってよ何してんの?

あたしはパブ店員の最終チェック中よ!?

直さなくて後で煩いのはあんた達でしょうが!」



言い終わると共にバインダーが軽く台に叩きつけられ、そのまま部屋のドアまで移動する。

バインダーに挟まれた用紙の少々空いたスペースに、再び筆圧強くボールペンが小刻みに走り出す。

電話口から零れる必要物をメモしていた。



「ついでついでって、パシリじゃないのよ!」



相手はまだ話していたのだろうが、素早くそれは断たれた。

ドアは盛大に放たれると、彼女は足早にフロア奥の備品室へ姿を消す。




閉じた音は、しんとした安置室に大きく高々と響いた。









―ターシャ危ない!―






 「!?」




彼女の声はまた、あの凄まじい衝突音に撥ねられた。




繰り返し見る衝撃的な悪夢にまた、目が開いた。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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