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1号ボートのエンジンが高鳴る。
排気の臭いは一瞬、その場を舞っては、迫り上がるゲートから忽ち入り込む潮風に拭われた。
「頼んだぜ。
ターシャ・クローディア、無事に連れて来い」
シャルはジェットボートに乗車後、研究員から最終確認として指令を言い渡された後、South Gateから飛ばした。
厚い雲は月を覆い、環境は一層黒で取り巻いていく。
冷える夜風は立つ飛沫と共に、彼女を刺激した。
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大好きで最高の友達の声は、何だか忙しない。
刻一刻と迫っては嵩張り、ハウリングする様に闇を響かせる。
―危ないターシャ!―
彼女は何故、そんな事を言うのだろうか。
何処か分からない、足もつかない暗闇で、ただ、必死になる同じ声が波打ち続けた。
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その日、院内は厄介だった。
近くで火災があり、緊急搬送で騒ぎ立てている。
お陰で私物のスマートフォンは鳴りやまず、つい出たら応援要請をされる始末。
成り済ましの研究員は今日、不在の設定でシャルと任務を遂行する計画だ。
目立たない黒の服装で、既に院内には居た。
そうしているものの、病室を出てすぐの所で、面倒な電話相手に向かって適当な言い訳を並べ続けていた。
こうなる前に何とか遺体搬送の段取りは完了しており、そのルートも普段通り無人状態。
救急対応はこことは正反対の場所であり、人員がありがたい事にそちらへ偏っている。
いつも通り、通行人との接触は無いだろう。
シャルは慣れた手付きで指定の部屋にダミーを搬入しては、着々と入れ替え作業に当たっていた。
「寝てたんですって。
やっとタクシー捕まえてこれから行きますから」
患者衣姿だった遺体の着替えはあっという間で、電話を切り終えるとシャルは颯爽と部屋から出て来た。
「はえぇな…」
つい驚き彼女を追いかける。
「よくこんな事半年近くもやってんな…」
この作業を難なく熟していたレイシャや、これまでの仲間にただただ感服する。
エレベーターが止まると、非常灯だけが灯る廊下を直進する。
裏口から出た所に停めた黒のワゴン車に、担架は入れられた。
淡々とほぼシャルが対応すると、彼女は運転席に座る。
「なぁシャル、ここの任務が嫌過ぎるって言っといてくれよ」
エンジン音が鳴り響くと、彼女はランプを点けては言った。
「回収。無事に連れて行く」
「は?」
車は突如発進すると、既定よりもやや早い速度で去って行った。
「あいつ返事……」
その違和感に首を傾げた直後、また電話が鳴った。
いい加減現れねばと慌てて、彼はその場で着ていた黒パーカーを脱いでは非常勤医師に切り替わる支度に入った。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




