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黒い、球体型の鉄格子。
両側から、重々しい黒光を反射させて伸びる2本の金属アーム。
それは、中のアンドロイドにこちら側から触れる為の物。
鉄格子の正面は現在、人1人が通れる程の隙間が空いている。
底から張り巡らされた、今にも絡まりそうな量の導線は、こちらに備え付けられた操縦席を兼ねたコンピューターデスクに繋がっている。
現在は3台の内中央1台に、新型アンドロイドが裸体で固定されている。
背面や、限定された関節から伸びる導線は、付け根付近から鉄棒になっており、グリップができる構造。
その先端はプラグになっている。
頸椎、胸椎、腰椎の限定部分、両膝裏、両足首、両肘に空いた極小の穴に分かれてインサートされていた。
両目は現在、眼窩に沿って黒く、広く開眼しており、小さな青白い光が奥の中央でぼんやり灯っている。
時折、何かが操縦席から送信されているのか、白光が透明の導線を規則的に流れては、アンドロイドの裏や体内に消えていく。
10cm四方程に開胸されているが、1辺は切り過ぎ故に縫合した跡がある。
その奥には、青、金、白と僅かな光を放つ基盤が埋まっていた。
レイシャは椅子の右横のコンピューターに移動する。
液晶には、見るに堪えない細やかなソースコードが延々並び、新型が本格的に起動しようとする様が描かれ、情熱すら感じた。
左の、椅子が佇むコンピューターデスクに再び戻る。
デスクの両側に据え付けられた縦型ハンドルが奥へ最大限倒され、グリップに装着されているクラッチレバーが大きく開き切り、ロックが掛けられている。
その間には、アンドロイド製作用のコンピューターと、デスクに内臓されているキーボード。
右のデスクでコードを表示していた物よりも巨大で、広い液晶を持つ。
黒背景に、左端には緑のゲージが立つ。
それは下から迫り上がった72.6%を表示した位置で停止していた。
その数字に、彼女は驚愕した。
それを除いた有り余るスペースには、新型アンドロイドの映像設計図が、ゆっくりと回転しながら緑で表示されている。
その右端の枠内には、骨格の動きの指示が途中までタイプされていた。
彼女は吸い込まれる様に、目を奪われていく。
複雑過ぎて解読できないのは力不足だろうが、圧倒的な技術と能力の差を感じた。
誰にも見えない物が見え、感じる。
彼自身の生まれ持った素晴らしいセンスを、拠点一同が評価していた。
ここに自分の手が届く事はきっと無いだろう。
そして、新型ならではのコマンド表示枠。
レーザー射撃、表情、感情のコードは、これからより綿密に埋まるだろう。
彼女はこの光景に鳥肌を立て、感銘を受けた。
勝手に感動の息が漏れ、足早にその場を後にした。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




