表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#04. Analyzing 回収
27/189

[6]




【Warning】

※遺体解剖、防腐処理、スタッフの発言に

 不快感を催す可能性があります。

※6/30(3投稿目)まで、本現場シーンは続きます。

※3投稿目の描写はほぼ和らぎます。

 ご不安な場合、こちらに合わせて戻って来ても

 良いでしょう。








 同時進行で行われる作業は手早く、見るに無残だった遺体からは血が殆ど拭われていく。

端では傷口の縫合作業が執り行われていた。



「そろそろ仕立て屋になれちゃうわ。

あまり酷い部分はタトゥーなんか入れてみる?」



「皮膚を縫うだけじゃもうつまらねぇってか」



元皮膚科医の女の呟きの向かいで、元整形外科医の男は、砕けた骨を次々と雑にアルミプレートに打撃音を上げながら応答する。

4枚目のそれは間も無く5枚目に移ろうとしていた。





 背後では、監督の話し声が聞こえ始める。




挿絵(By みてみん)




「ああ、あっさり空になる。

とは言ってもこんな時間だ、そっちへ上げるのは、

午前入りに残りの除去作業をさせた後だが」




電話口からは重く、疲労で掠れた声が零れていた。

フラフラした声からすると、寝ていたのだろうか。




「ではそれで。

補佐官ならもう顔を見せないだろう。

酷い容姿だった」




不意に聞き取り辛くなった声に眉を顰め、指で片耳に栓をし、声に集中する。




「まぁそう言うな。

こうまでなると屍に目が無くなるのも無理無いだろう。

……顔面はそう傷ついてない」




大方、半端に仕切るくらいなら回収して来るなといった所か。

彼はレイシャを挟まない部下とのやり取りが、時に億劫になる事がある。

事情を知る監督は、作業現場に目を向けながら、通話をそっと意識している。




「……では明日。

トップ、いい加減顔出さないと、皆あんたを忘れるぞ。

たまには仲間に話を聞かせてやったらどうなんだ」




数秒の間が空き、微かに漏れた息の後、通話は断たれた。

相変わらずだ。

だが、無理もない事である。

監督は短く溜め息をつき、現場に目を向ける。





「新規骨格を入れる判断が付いた。

悪いがもう一仕事頼む」



「それが良い!」



判断待ちの間、半端に進行していた内臓除去班及び縫合班は、目を輝かせた。



「一気にいくぜ」



元外科医の男がメスを胸部に一線素早く走らせたが、即座に止められる。



「ちょっとちょっと何してんの馬鹿!

広く開くのは背部!

その次が頭部で胸部は手が収まる程度だって!

ああもう…」



「お前がやるとフランケンシュタインの誕生だな!」



笑いながら通過する男もまた元解剖医。

その手には大量に盛られた除去物の銀プレート。




挿絵(By みてみん)




「あー目は私にやらせてね」



手からはメスの鋭い銀が放たれる。



「眼科医ってのは目玉オタクか?

そんなに好きなら部屋一帯ホルマリン漬けしたやつ並べとけ」



「そーんな事したらピクルスと間違えるでしょっ」



彼女は眼窩に触れては瞼を開き、処置を施し始める。





 高々と鳴り続く吸引音が響くと同時に、防腐液が浸漬用タブに溜められる液体音が入り組む。

スピーディー極まりない作業は、早くも折り返し地点だ。





 頭部に集まるスタッフはペンライトで目の特徴を念入りに調べ、カルテと写真に納めていく。

アンドロイドの目は白光を持っており、それを覆う為の義眼製造のデータ収集作業。

如何に実際の目に近付けるかは、既に研究済みだ。

摘出された実物はダミーに回る。




 直に義眼製作班から薬品班に入れ替わり、遺体の頭元には小さなステンレスワゴンが到着する。

そこにはまた、組織が開発した常在菌保持用の薬品が並んでいた。

数種類の試験管と、同様の形をしたプラスチック容器の中で液が揺れる。

それを複数の輸液バッグ、並びにスプレー容器に移されていく。



「最後の晩餐は何だったか。

このカスじゃ分かんねぇ。

歯並びは割と模範だな」



口内の確認をする元歯科医は抜歯を始め、歯牙保存液に細々音を立てながら放り込んでいく。

この保持薬品も彼等の開発品である。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ