表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#13. Data processing 再び
181/189

[1]




 火の海ばかりを見ていたお陰で、今日が清々しい晴天に陽光が射している事など、皆無だった。

気付けば、陽はすっかり真上を過ぎている。






 到着した地元の船着場で、ターシャは一時、付近の縁石に腰掛け安静にしていた。

今は、2度の死別に途方に暮れている。

酸素マスクを着用し、肩にはブランケットが掛けられ、レスキュー隊員が駆け回るこの場をただ、呆然と眺めている。

赤く点滅し続けるランプが、小刻みに体を照らしていた。

隊員達が忙しない音を掻き立てているのだろうが、今は無音の中にいる。






 最悪の世界はもう、無い。

終わったのだ。

しかし同時に、彼等も消滅した。

それに顔を大きく突っ伏し、声無く身震いする。






 深い闇に(よぎ)る、ルークやアマンダ以外の数々のアンドロイド達。

彼等もまた、何処かで誰かに愛され、また愛し、生きていた人間だっただろう。

そんな彼等もまた、一気に消えてしまった。

収拾がつかない感情に、顔や手は只管濡れていく。






 小さな背中を、陽光が優しく温めてくれる。

昼の空は、実に美しいスカイブルーが広がっていた。

僅かに雲が漂い、時折影を生み出す。

空気は暖かく、じっとそれに包まれて蹲る時。




「君?ターシャって」




若々しいレスキュー隊員は、がたいがしっかりしている。

話し方や声からして、年齢が近く感じた。

職業が職業なだけに、大人びて見える。




しかし、あまり顔を合わせる気になれなかった。

涙で顔が最悪な状態だからという事もあるが、現れたその隊員のヘルメットから覗く僅かな金髪が、ルークを思い出させる。




「爆発から逃げ切っただなんて、君、俺達の仕事に向いてるかもよ」



「冗談……」




彼は明るく笑った。

呑気にフラフラと話しかけてくる様子から、まだ駆け出しだろうか。




「だよな。

でも、なかなかできっこないよ、あんな状況から切り抜けるだなんて。

俺が苦労してる事を、あっさりやってのけたのかな」




空気を変えようとしてくれているのだろうか。

ターシャは彼を見上げ、酸素マスクを下ろす。




「何に苦労してるの…」




彼は振り返り、ふと笑う。




「隊長に言われるんだよ。

冷静になる事。

仲間を信頼する事。

あと何だ…話を聞けって!」




ターシャは暫し間を置くと、首を振った。




「違う……

あたしはそのどれも…全くできてなかった……

全くよ……」




彼は目を丸くさせる。

彼女が向こうでどんな体験をしていたのか、一切知らない。

しかし、そこに座る彼女は助かったはいいものの、言い方からして自分を責めているように感じてならなかった。






 それでも隊員の彼は、明るく笑って見せる。

ターシャはそれに、横向けた顔を徐々に戻した。




「顔上げろよ!

こうして、生きて帰ってこられたんだ。

ちゃんと意味があるし、そうであるように努められる」




ターシャは驚き、直ぐに返事ができなかった。

勇ましい彼もまた、こんな自分の背中を押してくれる。




「カイル!さっさとしろ、もう出るぞ!」




そう呼ばれて慌てて振り返る、目前の隊員の彼。




「じゃあなターシャ。きっと大丈夫。

もう一度、頑張れ」




それも忙しなく、立ち去りながら言うではないか。




「あの!…ありがとう!」




彼は爽やかに手を向けると、颯爽と向こうの隊員車両に消えてしまった。




ここらでは見かけない制服。

きっと、この未曾有の事態に、応援でどこかから派遣されてきたのだろう。

なのに、こんな2度と会えないかもしれない自分に、温かい光をくれた。

そしてそれと入れ替わるように




 「「ターシャ!」」




両親が、呼んだ。






 振り返ると、かけがえのない存在が強く飛び込む。

先程まで淀んでいた、やり場のない、収拾が付かない気持ち諸共、厚く温かい手で強く抱き締められた。




 その後方からは、両親を連れてきた刑事が現れる。

この光景に安堵し、微笑むのだが、ターシャは涙を拭い、両親の腕からそっと離れた。




「ごめん……ごめんなさい……」




そう言って真剣な表情になると、預かった3つの証拠と、アマンダの花束を渡し、刑事と向き合う。




「火は、私がつけました」









MECHANICAL CITY


12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。

最終話

キャラクターエンドクレジット

作者後書き


また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。

X/Instagram(@terra_write)

19:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)

19:55~ 次回公開作前書き

20:00~ 次回公開作発表


感謝はお伝えしたい為、お越しください。

次作は、気が向きましたら是非。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ