表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#12. Complete 細胞の記憶
179/189

[21]




 (わめ)き声は廊下の暗がりにみるみる消え、ガソリン臭だけが濃く立ち込めるロビーは、一気に静まり返った。

馬鹿馬鹿しい時間が終わり、瞬きも忘れ、円らな瞳をあてもなく向けている。






 部下の前では漲っていたものがあったのに、すっかり何処かへ消えてしまった。

銃を握る手が、冷えていく。

感覚が失われていくのは、本格的に人間でなくなり始めているのか。






 死を望みながらも、拒む時が幾度となくあった。

それは、もう少しだけでも、生きたいと思ってしまったからだ。




(俺には、見たいものがあった…)




そして今、十分過ぎる程にそれを見て、得たものを感じている。

部下の声や表情が、瞬く間に過ぎ去った。

こんな自分でも、少しは役に立てただろうか。

最期は、そういう事にさせてはもらえないだろうか。

これも、甘ったるい贅沢な希望だ。






 暇さえあれば眺めてきた大海原。

謎多きその世界がどんなものか、ずっと知りたくてならない。

目の前に淀むのはガソリンの海だが、今はそれが美しい水面に見え、接近してくる様だ。




(…そこに……行ける…か……)




 「「トップ!」」




アマンダとルークの叫び声がし、ジェレクもヘンリーを振り返る。






 ヘンリーは聞こえていないのか、呆然と立ち尽くし、銃口をタンクに向けていた。

体温はみるみる下がり、呼吸も弱い。






 3体は入り口に飛び付き、ガラス扉を共に破壊すると中へ突撃した。




 ヘンリーは小さく息を吐くと、その目に光を取り戻し、浮かび上がる数々のぼやけた顔に微笑む。




 アマンダが先に駆け、後からルークが追う。

その背後にジェレク、ガレージからはビルが合流した。




 ヘンリーは妙な感覚に陥る。

ロビーで一斉に集合する彼等の動きは、コマ送りされていた。

その間、全アンドロイドの目を見渡す。

向こうへ渡り、もう居ない筈であろうルークとアマンダが目に飛び込んできても、遅かった。






 トドメの鉛の貫通は、(はや)い。




 落ちる火花。

破損したアンドロイドからの漏電。

それらに真横から合わさる、目を刺す程に(まばゆ)い白光。

嘗ての事件の記憶を呼び覚ますそれに、彼は恐怖で反射的に目を瞑った。

体は激しく何かに押され、拘束された感覚をおぼえると、そのまま真横へ撥ね飛ばされた。










 世は寸時、時の流れを止め、静を生む。




 凹凸に(かたど)る白い巨大な爆炎に、中を渦巻く朱。

白煙を覆い被さる様に、太い黒煙の柱が高く出現した。




 その光景は、辺りの虹彩(こうさい)を埋め尽くし、目と脳に焼きつける。

悪の根城、機械の街は最後、イーストで爆裂し、天をも()ぜた。




 残る建造物と共鳴する轟烈は身の支えを解き、人々は船内で崩れる。

一帯が蜃気楼にうねり続けた。




 遠く離れた位置でも爆風が髪を揺らす。

ターシャは救助船の縁になんとか掴まり、それを見届ける。




 彼女の震える目はやがて、白く、細かい光を纏った美しい糸の数々が捉えられた。

軽やかに海面を舞うそれらは次第に合わさり、太くなる。

そして光の柱となり、閃光の如く天に上昇すると、真っ青な晴天が鮮やかに広がった。






………………


………………


………………









MECHANICAL CITY


12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。

最終話

キャラクターエンドクレジット

作者後書き


また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。

X/Instagram(@terra_write)

19:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)

19:55~ 次回公開作前書き

20:00~ 次回公開作発表


感謝はお伝えしたい為、お越しください。

次作は、気が向きましたら是非。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ