[17]
アマンダは、やっと近付いてきたルークの真っ直ぐな眼差しと、心を固めた表情を振り返る。
彼は、左目を復旧させながらターシャに歩み寄る。
寂寥を微かに漂わせるが、迷いは無い。
彼女の傍に着くと、左手に抜き取ったレーザーの銃口を握ったまま、強く抱き寄せた。
「………大事な話がある…」
急な事にターシャが動揺した途端、細く、柔らかい何かが顔を這った。
「― ごめん… ―」
それは暗闇で聞こえていた、誰のものか分からない凛とした低い声。
気付けばそれが、白い光の糸に変わり、優しく頬を撫で、瞬く間にターシャの全身を這った。
光り輝くそれは複数に増え、辺りの熱を取り払う。
それらはルークとアマンダに纏わりつくと、太さを増した。
その後、噴水の如く空高く2人から吹き上がる。
ターシャはルークの背中に手を回したまま、真上を見上げ、起きている現象に呆気に取られていた。
頭上から白い球体の空間を生み出す様に、細かい光を纏う糸は柔らかく落ち、忽ち3人を包み込む。
「― ターシャ、大丈夫 ―」
傍に立つアマンダは、言った。
彼女の肌には、まるでパールを思わせる細かな白い光が散りばめられている。
「― 心配しないで。壊れたりしない。
もう危なくないよ!―」
「……アマン…ダ…?」
光の輪郭を持ったアマンダは満面の笑みを浮かべると、ターシャの空いた手を取った。
「― 見てるわ。だから、生きて ―」
ターシャの見開かれた目から、大粒の涙が溢れ出る。
更に横から、光が加わった。
彼の肌も同様に、白く細かい光を散らし始める。
「……ルー…ク…?」
彼は彼女の肩から顔を上げた。
それは悲愴な面持ちで、恐々と彼女を見つめてくる。
「― 悪かった…酷い目に遭わせた… ―」
その声は、これまで聞いてきたものとは違い、低く零れ落ちた。
彼は今、ターシャを撥ねてしまった事を必死の思いで詫びている。
「― どうか…どうか君の友達や…俺の分も生きて…
守る。約束するよ… ―」
突如生まれた白光の糸の空間で、白い光の輪郭を浮かべる2人。
ターシャは大きく彼等を抱き寄せ、泣いた。
これまでに無かった温もりがある。
今ここに居るのは、間違いなく2人だ。
酷く喉を締めつけられながらも、状況を察して言葉を紡いでいく。
「…ごめんねっ…アマンダ…
あの時っ…ごめんなさいっ…」
ターシャは事故当時を思い出し、謝り続けた。
しかしアマンダは、力強く彼女を抱き締め返すと微笑み、首を振る。
「― 怒ってないよ、ターシャ。
大好きだよ。ついてるからね ―」
その大らかな心と言葉に今、心が救われた。
そして、横で肩に顔を突っ伏すルークを振り向く。
「ルークありがとう…もう大丈夫。
もう、どこも痛くないよ」
彼は彼女の肩で酷く震えながら、頷く。
酷く自分を責めているのか、ターシャは震える彼の背中を擦った。
「安心して。また会えて…良かった…ありがとう」
3人の目が合うと、互いに額を寄せ、手を取り合い、微笑んだ。
3人を包んでいた光の空間は徐々に狭まり、ルークとアマンダに向かって収束する。
ターシャはそれをじっと、見届けた。
2人の肌に浸透していくそれらはまるで、維持されていた細胞が持つ記憶に思えた。
MECHANICAL CITY
12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。
最終話
キャラクターエンドクレジット
作者後書き
また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。
X/Instagram(@terra_write)
19:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)
19:55~ 次回公開作前書き
20:00~ 次回公開作発表
感謝はお伝えしたい為、お越しください。
次作は、気が向きましたら是非。