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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#12. Complete 細胞の記憶
174/189

[16]




※約1900字でお送りします。



#12. Complete 細胞の記憶

[9]

「>>私は安心を選ぶ。親友のね。

もう、決めてた。>>>>」

ターシャは、ふと零れた彼女の言葉の意味が分からず、目を瞬く。

「これがか…ならダメだ。

>>まだ大事な事がある。行かない。>>>>」

ルークは呟いた。



[14]

ルークは直ぐさまターシャとアマンダ、隊員を押しやり、レスキューボートの方へ強引に連れて行く。

イーストの連絡橋は、間もなく落下しようとしていた。







 駆けつけた1人の隊員は、ルークの押しやる力に戸惑う。

頭上から細かい落石が起き、それらが降りかかると共に落下を思わせた。




 片や、消防艇や消防飛行艇による放水により、火は僅かに治りつつある。






 ターシャは隊員と共に押しやられる中、アマンダに咄嗟に手を伸ばした。




「ターシャ、もう部隊が着いてる。大丈夫よ」




アマンダの声の後、間髪入れず目に飛び込んだのは、柵の向こうに揺れる救命ボート。

他の隊員も待機していたところ、出現したターシャと後の2人に驚く顔を浮かべる。

聞いている被害者情報から、目を疑っている様だ。






 気付けばルークは途中で立ち止まり、皆と距離ができていた。

何かをしている様だが、ターシャはそれを捉える間も無くアマンダに押され、隊員に腕を引かれる。






 親友から引き離されていく。

頭では不意に、花束に添えられた彼女の言葉が過った。




 ターシャは隊員の手を自然と振り解くと、アマンダの腕に飛びついて引き寄せようとする。

しかし、彼女は動かなかった。




「何で…」




熱波に乗って流れる細かな火種に、アマンダのドレスは温かく靡く。

背後からの隊員の声など、聞こえなかった。




「私とルークがここに居るのは、自分でそう決断したから。

トップや補佐官の指示で、残ってるんじゃない」




ターシャは煌々と赤く照らされる彼女を、真っ直ぐ見ながら声も無く驚く。




「分かってるよ、ターシャ。

私も、貴方が安心すればホッとする。

でも1つだけ、許して欲しい。

ここで終わりにさせて」




ターシャの首は、自然と振られる。






 安らかに眠り、行くべき所から生者を見守るもの。

ボートでルークに告げた自分が望むそれを、今、親友はこの場で選択している。

アマンダとルークがノースで互いに話していた、自分にだけ理解できなかった会話はこの事だった。






 そう、望んでいた筈だ。

しかし、心は結局揺れ動くままだ。

イーストのロビーに消えたあの男は、2人も帰っていいと言う。

広間に居たRも、実際に向こうへ脱出した。




 だが、元々優しいアマンダはやはり想像する。

向こうへ戻り、仮に家族が受け入れたとしても、それで落ち着く事は無いだろう。

事故で死別したが、こんな形であれ親友と再会できた。

これで、十分だった。






 レスキュー隊はそこに居り、やっと逃げられる中、ターシャはアマンダの手を引いてしまう。






もうずっと、恐怖が治まらないままだ。

この地も、組織も。

銃や針、暴力にアンドロイドも。

何より、今の自分自身が。




親友が操作されていると明確であっても、求めてしまう、どうしようもない気の迷い。

無理やり意思決定をし、強行が招いたこの実態。

全てが最悪だ。

でもここで、彼女に砕けて欲しくはない。

あらゆる感情が表情に滲み、声も出ない。




 その最中、後方で独り佇むルークに視線が向く。

彼はどういう訳か、左目を引き上げ、レーザーの銃口を出した。

動作が止まるとそれを掴み、毟り始めるではないか。




「ルーク何して…」




ターシャが恐々と彼を見る背後では、その光景を目にしていた隊員が声を上げながら目を見張る。






 痛みを表現できるルークは、その動作中、幾度となく動きを妨げられていた。

それでも必死に抗い、片目をきつく閉じ、険しい表情を浮かべながら強引にパーツを抜き取る。

その跡から、青白い電流が細く宙に走った。

彼は、手にした熱を帯びるパーツを煽ぐ様に振る。

目の奥に灯る青白い光。

そこには時に、点滅する金色が走る。




 次に、右肘に仕込まれた予備データ基盤に触れ、暫く目を左右させた。

そこには、これまでの記録が全て残されている。

それらを高速に振り返りながら、ヘンリーを胸に想像していた。






 ヘンリーから受け取ったものを解析した時、ある多くの事が判明した。

自分がこれまで見て、感じてきた事。

話してきた事や、この体に搭載されているものが、光に変わって巡り続ける。

そして、判明した情報が加わる事で、合わさった。




それを確認し続ける目は鋭利になり、やがて、姿が見えないヘンリーを宙に睨め上げる。






 恨めしい。憎い。

だが一方で苦しく、悲惨な気持ちにスカイブルーの目が閉じる。

何故人が、こんな風になる前に、どこかでその存在を許し、受け入れる者が現れなかったのか。




 自分は、嘗てより決めていた彼の決断を、逃げや無責任などと言わない。

彼は、仲間や被害者、家族を捨てているのではない。

楽を選んでいるのではない。

率先して、誰の目に触れる事も無い(みち)

闇を選ぶのだ。

(ようや)く、遂に、やっと下した、彼にとっての大事な判断だ。






 ルークの目がそっと開く。

彼は、ここから更に決断する。

右肘の予備データの内容を、整理し始めた。




 先をどう生きるか。

彼等は、これから起こる事を何処かで目の当たりにし、時間をかけ、決めるだろう。






 ルークはデータ整理を続けながら、ある頼み事を静かにアマンダへ送った。









MECHANICAL CITY


12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。

最終話

キャラクターエンドクレジット

作者後書き


また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。

X/Instagram(@terra_write)

19:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)

19:55~ 次回公開作前書き

20:00~ 次回公開作発表


感謝はお伝えしたい為、お越しください。

次作は、気が向きましたら是非。




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