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※約1860字でお送りします。
部下達が撤退し、空になったイーストのガレージ。
焼け焦げる拠点が放つ鼻を突く異臭を、強風がそこに充満させている。
ビルは遂に、レスキュー隊と共に進路変更した機動隊と対面した。
黒い集団は、薄暗いガレージの中で逆光を受け、幾つもの揺らめく影の様だ。
統一して装着されたゴーグル越しにビルを捉え、装備していた突撃銃を向ける。
ビルは怯む事無く、壁に背を預けたままじっと彼等を見据えた。
その妙に落ち着いた佇まいに、到着した彼等は慎重な動きを取る。
遠くでは炎が立ち込める音や、連絡橋が軋む音がする。
その場のイーストは、不定期な揺れを微かに起こしていた。
「お勧めしないな」
やっと口を開いたビルに、一帯は身構える。
「……ウィリアム・エジャートンか。来てもらう。
代表のヘンリー・クラッセンはどうした」
「愛称があるんだがな」
ビルは、所持していた自分の警察手帳を投げてやる。
「生憎、ここの雇われだ。
お宅らのお望みは聞けない。
そう組み込まれてあるんでな」
彼は言いながら、基盤を据え付けている胸部を親指で指し示してやる。
それにキャプテンは、部下と共に目を剥いた。
「代表はお宅らと対面する気は毛頭無い。
爆発する前に逃げるんだな。
ご家族が悲しむぞ」
ザワつく一帯の中キャプテンは、この奥に容疑者がいると見て突撃合図を出した。
船に居た隊員も下船し、イーストのロビーに繋がる扉に走る。
しかしビルは、行く手を阻んだ。
彼等はみるみる一丸となり、ビルを取り押さえ、扉を開けようとする。
纏わりつく数々の手を、ビルは手際よい速さで振り解いていった。
力を入れ過ぎては容易く死に至らしめられる。
だが、全て軽症に留めて解放してみせた。
数秒の間だった。
身一つで、複数の部隊を弾き返したビル。
その光景に、船内に唯一居た部隊は操舵室へ入り、発報する。
「ブリッジ!アンドロイド確認!容疑者確保が難こ
突如船が揺れ、悲鳴が四方八方に飛び交った。
ビルが、ガレージに乗り込んで来た隊員達を只管船に投げ飛ばしていく。
中には、あっさり海へ放り出される者も。
奥のロビーへ続く扉が一時開放されるも、ビルは隊員の襟首を即座に掴み、突撃を阻止。
そのまま後方へ大きく投げ飛ばすと、キャプテンと対立。
向けられた銃は天井に向かって威嚇発砲されると、硝煙を上げたままビルに向けられた。
「そこを開けろ。これ以上の抵抗は無しだ」
「お引き取り願う。この先は火薬厳禁の場だぞ」
「何……!?」
キャプテンの目が震える隙に、ビルは彼の襟首を引っ掴んで扉から引き離す。
その異常な腕力にキャプテンは逆らえず、掴まれるまま声が漏れる。
「貴様っ!どうすりゃ止まるっ!」
「お宅らには無理だ。
今や招き入れられる場所は無い。
ああ、せめて缶コーヒーでも出してやりゃあ良かったか。
愛想が無くて悪い。
何せ、瀬戸際なもんでな」
「容疑者はそこに居るだろう!連行する!」
キャプテンは大きく腕を振ると、力に抗い、ビルの顔に銃口を向けた。
だが彼は向けられた銃口を容易く握り、床に向けていく。
その尋常でない力に、キャプテンは歯を食いしばる。
「何だ。
どうせこの先も機械に助けられ、やっていくんだろう。
世話になるんなら、互いに良好が望ましいんじゃないのか。
後、詳細をご存知ならこいつ、下ろした方がいいんじゃないのか。
物騒極まりないぞ。
こちらは、復活して生きてるんだがなぁ。
銃規制の課題は、まだまだご健在か」
冷徹で動きの無い表情はもはや人ではないと、キャプテンはビルに顰め面をする。
引く事無く、ビルを突き飛ばそうと肩でぶつかり続けた。
その間、他の隊員が遂に扉へ移動し始める。
ビルはキャプテンと絡む中、開放された扉に視線を流す。
部隊は突破し、慎重にロビーへ駆けて行った。
ビルは掴んでいたキャプテンをあっさり扉の方へ手放してやると、肩を払う。
そして開き直った態度で、不気味なものを見る目を向けるキャプテンに、解放されたままの扉の奥へ手を差し出した。
ヘンリーは壁に預けていた重い背を離し、床に張るガソリンに微かな波を立てながら、ロビーの中央まで移動する。
足元に淀むそれは、映していた己の輪郭を歪め、崩した。
ガソリンと炎に沈む予定ではなかった。
やはり焼かれる路かと、微かに鼻で笑う。
右手指先から血が1滴落ち、淀む床に同化する。
それに視線を落としたまま、意識し始める。
ガレージの方から、激しい足音が押し寄せてきた。
それらは一気に黒い姿と化し、目前に壁の如く立ち塞がる。
「動くな」
複数の銃口が一斉に向けられた時、彼は先程の疲れた表情を一気に振り払うと、右肩を部隊に向けて対面した。
MECHANICAL CITY
12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。
最終話
キャラクターエンドクレジット
作者後書き
また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。
X/Instagram(@terra_write)
20:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)
20:55~ 次回公開作前書き
21:00~ 次回公開作発表
感謝はお伝えしたい為、お越しください。
次作は、気が向きましたら是非。