[11]
拠点を覆う厚い黒煙からは、炎を纏う地や壁面が垣間見える。
要請された消防艇が2隻到着し、倒壊した燃え盛るサウスと、それに合わさり延焼するウェストに向かい、放水が始まった。
火災規模に目を凝らす消防隊員の飛び交うやり取りによれば、消防飛行艇の要請までもがなされている。
風向きに変化が伴い、広間の方へ火の粉がみるみる舞う。
その間、サウスと共に炎が這うウェストから、軋み音が低く立ち始めた。
広間の先にある、来客を迎える船着場から状況を確認していたジェレクは、ウェストが倒壊する角度を察知し、その場から移動しようとした。
しかし、遂に沿岸警備隊が彼を目撃し、そこへ船を着ける。
ジェレクはルークと共にイーストから転落した衝撃で、体から不定期に電流を放っていた。
そんな事はお構い無しに、客人と対面してやる。
警備隊は彼の姿を目にするなり身構え、目だけで観察した。
「ここの警備員か。署まで来てもらう。乗船しろ」
彼等は銃こそ取らないが、今にも手に引っ掛かる体勢でジェレクを睨んでいる。
彼が何者なのか。
そこまでは未だ特定できていない様だ。
そこへ、更なる軋み音が体を振動させる。
ウェストが炎を上げながら、広間の方へ倒れ始めた。
「あんたら、偉く呑気じゃん」
ジェレクは面倒くさそうに零した途端、目の前の1隻に飛び乗った。
警官達は騒ぎ立てるが、彼は気にも留めず操縦室のドアを打ち破り、中の操縦士を突き飛ばす。
捕えろと太い声で指示が飛ぶが、ジェレクの力に適う訳もなく、彼に接触しようとする警察は片っ端から押し倒された。
「止めとけぇ。見えねぇのか。感電すんぜ」
言った傍から、細い青白い電流が宙を短く破る様に迸った。
つい手前にまで接近していた警官は、危うくそれに触れかける所で止まり、声を妨げられる。
「ファイヤーボールになりたくなけりゃあ掴まってろ」
勝手知らずの警備隊の船であっても、関係無い。
寸秒の解析で、彼は容易く操縦ができてしまう。
素早くハンドルを右一杯に切り、レバーを最高速度まで引き上げる。
急旋回する船の揺れに、警官達は体勢を激しく崩した。
異常事態に慌て、身を起こす隙も無い。
ウェストはやがて広間に倒壊し、その風圧に目も開けられなくなる。
高々飛散する火を纏う瓦礫は、火山活動の落石を思わせる。
それらは忽ち、沿岸警備隊の船やその周辺を襲った。
船内を陣取ったジェレクは、シフトレバーがそのまま最高速度を保つよう、傍にあった椅子の脚を操縦機器に突き刺して固定。
尋常でないアクションに、居合わせる者達は唖然とする。
ジェレクはそのまま操縦室の窓ガラスを蹴破ると、颯爽と外に出た。
「待て!行かせないぞ!止まれ!」
警官は目を剥き、寝そべった状態で咄嗟に銃を構えるが、ジェレクはそれに振り返る事無く船縁に乗っかる。
「だっせぇなぁ、諦めろ。殺り合う趣味はねぇ。
出直せ。そう直ぐには消えねぇぜぇ」
言いながらあっさり、海に姿を消した。
警備隊の船は、固定されたギアの影響でみるみる拠点から遠ざかる。
倒れた警官達が慌てて起き上がり、現場を振り返った。
途端、倒壊したウェストから、単発的な爆発が小さく2度起きた。
MECHANICAL CITY
12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。
最終話
キャラクターエンドクレジット
作者後書き
また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。
X/Instagram(@terra_write)
20:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)
20:55~ 次回公開作前書き
21:00~ 次回公開作発表
感謝はお伝えしたい為、お越しください。
次作は、気が向きましたら是非。