表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#12. Complete 細胞の記憶
168/189

[10]




 縦に細長い花弁を連ねる、青と紫のアスター。

それよりもやや幅広い花弁を持つ、オレンジ、赤、白の八重咲のジニア。

5輪が手で束ねられると、彼女の手が止まった。




襟に、もう1輪の白いジニアを残して。




挿絵(By みてみん)




 ターシャは、目の前の親友の行動に釘付けになる。

アマンダは不意に髪を優しく手櫛でとかすと、その手を眺めた。

そこに絡んだ1本の髪を使い、手慣れた様に何周も茎に巻きつけると、ターシャに差し出す。




 ターシャの視界は薄っすらと霞んでいった。

どちらの花も、アマンダが庭で育てていたものだ。




「はな?それが、そう?」




ルークが外を警戒する事を一時止め、不思議そうに瞬きしながら問う。

その様子に驚くターシャもまた、似た表情で言った。




「知ってる事が随分と極端なのね」




「そうか?

俺は、工業技術と医学と海洋生物に詳しい。

君は花を知ってる代わりに、その辺の事は知らないだろう?

変わらないよ」




不意に流れる緩やかな時間だったが、アマンダはターシャの手をトントンと叩き、目を合わせる。




「心配だろうけど、信じてターシャ。助かるわ。

何処へ行っても、貴方と私は、お互い想ってる。

向こうで一緒に居た時みたいに」




共に握る小さな花束が震える。




「私達は、何処で、どうあれ、大事な親友。

それはずっと変わらない。

例え貴方が、こんな姿の私を恐れ、受け入れ難くても、変わらないわ」




彼女はガレージから出た後、解析していた。

自分にはまだ、できる事がある。

イーサンの言葉を機に慣れた格好に着替え、庭に出て準備をしていた。






 ターシャは花束を握ったまま、目を拭って言葉を噛み締める。

目の前の親友に放った事を思い出し、胸が痛んだ。




 再び、爆音で建物が横揺れする。

ルークが入り口へ近付くと、そこには轟々と壁面を這う炎の光が差し込んで来る。

アマンダはターシャを真っ直ぐ見て、続けた。




「トップはここが長くは保たない事もまた、見越してた。

だからずっと注意を怠らず、段取りして生きてきた。

考え続けるのはいつも、遠い先の事ばかり。

海を延々見ている時は、いつかそこへ消えてしまいそうだって、補佐官は心配ばかりしてた。

彼は長い時間をかけ、先の決断をする」




ターシャは不思議でならなかった。

許されない極悪人が作り出した、アンドロイドのアマンダ。

彼女はしかし、親友である自分だけに留まらず、組織に対しても何かを想っている。

その優しい部分や、見せられたフラワーアレンジメントは、本人そのものと受け入れても良い程だった。






 途端、ルークが2人の元へ駆け付け、腕を引く。




「出る!ここもマズイ!」




一体何かとターシャは怯えるが、アマンダは彼女の背に手を回し、3人はそのまま入り口を駆けて出る。






 外へ出るなり、明々と炎が全身を照らした。

熱波も強く、ターシャはつい顔を伏せてしまう。






 巨大な火柱と化したサウスが、更にウェストへ大きな軋み音を上げながら傾いていた。

黒煙を激しく立てながら、そこからの歪な音は小刻みに縦揺れを起こし、足元を振動させる。

ウェストの頭は更に崩れ始め、飛散する瓦礫はより被害を広げた。

イーストと繋いでいた連絡橋が、ウェスト側だけ連結を断たれる。

そのまま斜めに中庭へ落下し、瓦礫が乱雑に転がった。

対になるイースト最上階が衝撃を受け、振動と共に唸る様な音を立てる。




 3人はノースを飛び出し、すぐ近くに立つ敷地の縁に沿って並ぶ柵まで走った。

それに合わさる様に、細かい瓦礫の雨がノースに瞬く間に降り注ぐ。

ウェストは徐々に厚く炎を纏い始めた。









MECHANICAL CITY


12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。

最終話

キャラクターエンドクレジット

作者後書き


また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。

X/Instagram(@terra_write)

20:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)

20:55~ 次回公開作前書き

21:00~ 次回公開作発表


感謝はお伝えしたい為、お越しください。

次作は、気が向きましたら是非。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ