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※予約投稿ミスに伴い、0時投稿になりました。
驚かせてすみません笑
#12. Complete 細胞の記憶
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ルークは状況全てに目を走らせた後、ノースに消えた。
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ノースの玄関を僅かに開けたルークとヘンリーの目が合う。
出てこなくていい。
そう込めて首を振って見せると、躊躇いを見せながらもルークは身を引いた。
ノースの入り口の外で、ヘンリーとレイシャが騒いでいた所を目撃していたルーク。
ヘンリーと目が合うなり、出てこなくても良いと首を振られた後、躊躇いながらもノースの中へ引き返した。
中は、入るなり実験スペースが広がっていた。
サウスのロビー同様に、青白い空間にはステンレステーブルが立ち並び、顕微鏡や細胞融合装置など、見た事のない実験器具がターシャの目に飛び込む。
超純水を作り出す装置に、質量分析計等の医薬品を分析する機器。
採取されたプランクトンが幾つもの保存容器に揺れ、壁に連なっている。
脇に立つステンレス棚には、これまで見てきた同様の物と思われる薬品類も並んでいた。
アマンダに部屋の奥へ導かれる中、ターシャは外の激しい爆音と火の音に身を縮める。
薄暗い、しんとした空間には、微かに薬品の臭いが染みついている。
所々、棚から何かが持ち出された様な隙間があった。
建物が微かに振動する。
連絡橋が軋む音もまた、耳を刺激した。
再び引き起こしている喉の痛みを堪え、息を整えようとゆっくり呼吸を繰り返す。
アマンダはターシャを研究所内のデスクに座らせ、目の前の椅子に共に腰掛けようとした。
だが彼女は、突如、顔だけを入り口のガラス扉に向ける。
その先に何があるのか、ターシャも同じ方向を見ると、そこには同じ様子で横向きに立つルークが居る。
2人共、何かを考えているのか。
何処か一点に集中して動かない。
彼に関しては、瞬きしながら目を左右させ、真剣な表情で床を見ている。
再び外での爆音にターシャが声を上げて怯んでも、彼等は微動だにせず黙っていた。
建屋はまた、振動を引き起こす。
「最終…判断…」
ルークの囁きに、ターシャは眉を顰める。
彼はまた何かを捉えたのか、急に顔を上げ、どこか遠くを眺めた。
考えているのか、ボートで脱出中の際に同じ表情を見た事を思い出す。
統一されて入れ込まれた、不明瞭で未完成な指示。
その内容は、誰にも分からなかった。
ただ、下す事になるその時の状況を見て、ヘンリーが明確な動きを定めて発信するとされている。
2人には今、ある確認がなされていた。
ターシャはアマンダに視線を戻す。
彼女は視線を宙に向けていたところ、振り向いた。
目も表情も変化しない彼女だが、ルークと同様に何かを考えている事は確かに感じられる。
彼女は、穴が開く程ターシャを見つめ、言った。
「>>私は安心を選ぶ。親友のね。
もう、決めてた。>>>>」
ターシャは、ふと零れた彼女の言葉の意味が分からず、目を瞬く。
「これがか…ならダメだ。
>>まだ大事な事がある。行かない。>>>>」
ルークは最終判断の事で、アマンダに呟いた。
「前にトップに聞いてみた事があるけど、覚えておけとしか言われなかった…」
静かになっていた2人が、やっと互いを見て動き始める。
ターシャには、2人のやり取りがよく分からなかった。
「ねぇアマンダ、どういう事...?」
不安な顔をする彼女の手に、アマンダはそっと手を添える。
「警察とレスキュー隊が、こっちへ回って来る。
着いたら移動しましょ」
アマンダはそう言って椅子に腰かけ、ターシャと向き合う。
「これあげる」
彼女はドレスの首周りに挿していた数輪の花を取り、小さな束を作り始めた。
MECHANICAL CITY
12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。
最終話
キャラクターエンドクレジット
作者後書き
また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。
X/Instagram(@terra_write)
20:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)
20:55~ 次回公開作前書き
21:00~ 次回公開作発表
感謝はお伝えしたい為、お越しください。
次作は、気が向きましたら是非。