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※約1540字でお送りします。
レイシャはイーストを飛び出し、ノースに向かおうとしたが、その肩をヘンリーが透かさず左手で掴む。
彼女は後方へフラつくと足を止め、彼を睨んだ。
「放して!こんなめちゃくちゃにして!
皆の居場所だったのに!」
涙ぐみながら、その腕を剥ぎ取ろうとする。
しかし、そんな事で振り解けるものではない。
彼は何も言わず、そのまま彼女を来た道に引き摺り戻す。
「行かせてよ!こんな焼け野原にして!
あんな餓鬼、許さない!」
怒りに我を見失う彼女は、扱いも知らないピストルのスライドを雑に引いた。
「レイシャ!」
ヘンリーの怒鳴り声は暴発と重なり、彼女は目前の状況に萎縮し、震え上がった。
状況を聞きつけ、ノースの玄関を僅かに開けたルークとヘンリーの目が合う。
出てこなくていい。
そう込めて首を振って見せると、躊躇いを見せながらもルークは身を引いた。
銃口は彼の左手で塞がれており、あっさり回収される。
仕舞う前にその手を一振りすれば、弾が地面に石の如く転げ落ちた。
レイシャは堪らず、小さく後退る。
今度は自分が、彼を撃ってしまった。
混乱し、立ち竦む。
囁く様な謝罪が、涙と共に勝手に零れた。
彼女の腕を引いても、微動だにしない。
ヘンリーは細々息を吐くと銃を仕舞い、無理矢理左腕でレイシャを引き込むと、肩に担いでやる。
彼女は驚く間も無く、ガレージへ連行された。
唐突な事に慌て、その背中を必死に殴り、抵抗し続けた。
「下ろしてヘンリー!」
「もう下がってろ…殺しは俺がする…」
肩に機械の手で固定されたまま、彼女は目を覆い、静かに涙を呑む。
ガレージの扉を開けると、そこは残り1隻になっていた。
作業チームの監督数名とイーサン、レアールが居合わせており、突如現れた2人の光景に驚く。
ヘンリーがレイシャを肩から下ろすと、ボートの傍に居たイーサンの方へ押しやる。
その行動は乱暴で、イーサンは腕に急に飛び込んで来た彼女とヘンリーに、目を往復させた。
「早く乗れ!」
監督達がボートから忙しなく吠える中、レイシャは彼等に慌ただしく引き渡される。
その間ヘンリーは、スマートフォンを操作していた。
それにイーサンは苛立ち、咄嗟に彼の左肩を掴んだ。
「急げ!」
しかし、その手はあっさり引き剥がされてしまう。
その力に痛みの声を漏らす中、そのままボートの方へ押しやられた。
「乗っとけ……」
視線は終始、液晶に落ちたまま。
その態度にレイシャは苛立ち、部下達を押し退け、下船した。
すぐ先に立つイーサンを追い越し、顔を上げないヘンリーの袖を引っ張る。
「何で今なのよ!
モニターなんかさせて!
皆ここへ呼んでおけばよかったじゃない!」
それでも彼は、怒鳴る彼女の手も払い退け、無言を貫き続ける。
それにむしゃくしゃしてならない。
「何とか言いなさ
ヘンリーの肩に掴みかかるのと同時に、声が止まる。
レアールが、そっと肩に触れてきた。
レイシャは振り返るなり、レアールに船内へ引き込まれる。
流れでヘンリーは、未だボートに乗らずに端に立つイーサンを左手で掴み、無理矢理共にプラットフォームへ着いた。
刹那、細かな横揺れが起き始め、ガレージの扉を振り向く。
サウスが凭れかかったウェストから破壊音がし始めた。
この場も直に影響が出始めるだろう。
ヘンリーは再びスマートフォンを見る。
そこに出た表示を確認するなり、イーサンに画面を向けて渡した。
ただでさえ落ち着かない状況の中、何事か。
イーサンはそれを手に取ると、そこにはルークとアマンダの決断が届いていた。
言葉も無い。
目は揺れ、視線はどこかへ自然と逸れていく。
気持ちのやり場が分からないまま、瞼は震えながら閉じ、静かに息を吐いた。
何事かとレイシャが透かさずレアールを振り解き、その場へ飛びつく。
だが、画面はバッテリー切れでシャットダウンすると、力無く船内の床に転げ落ちた。
MECHANICAL CITY
12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。
最終話
キャラクターエンドクレジット
作者後書き
また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。
X/Instagram(@terra_write)
20:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)
20:55~ 次回公開作前書き
21:00~ 次回公開作発表
感謝はお伝えしたい為、お越しください。
次作は、気が向きましたら是非。