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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#12. Complete 細胞の記憶
163/189

[5]




#11. Almost done 実行 [15]

「トップ!この煙のせいで、厄介なのが来る!

俺が時間稼ぎするから、早くガレージ行きな」

そう言って再び屋内に戻ると、ヘンリーも即座に中へ入る。

しんとする住居が並ぶ廊下には、轟々と鳴る火災音。

「……様に…なったな…」

「ああ。もう蹴落とさせやしねぇよ」







 サウスから轟く複数の爆音など、ヘンリーは見向きもしなかった。




 ある日を境に、部屋には何も置かなくなった。

寝床とデスクのみの殺風景な空間。

温かさなど微塵も無く、あるのはこの身と、いつでも持ち出せるように纏めていた拠点の全データのみ。

そう膨大でもなかった。




 傍に出されていたのは、黒の耐衝撃性の60Lサイズのスーツケースが2つ。

後は、今手にしているラップトップ1台。








 時折部屋が揺れ、軋んだ。

だが、呑気にベッドに腰かけ、高速にタイプしている。

落とし込めていなかった事を思い出し、慌てて液晶に齧りついていた。

幾ら異常なキャパシティーを持つとは言え、忘れる事もちゃんとある。

その流れで、保安官達にこちらの動きも伝えた。






 完全消滅もまた、不可能。

確実にこの先、ここの事は掘り起こされていくだろう。

それでも、これらは全て、判断材料だ。

ハッカーの部下により整理されたデータの最終確認を、速やかに終える。

サウスに集合させていたゼロは、直に燃えるだろう。






 作業を終え、ラップトップをスーツケースに放り込んだ。

そこには更に、開発した最低限のアンドロイドのサンプルパーツまでもが纏められている。

勿論、新型の顔面パーツも含めてだ。






 それらを仕舞うと、彼はやっと窓際に移動し、変わり果てた我が家を見下ろす。








 サウスの爆風と、吹き抜け続ける潮風により流れ込んだ火の雨は、瞬く間に広間へ降り注いでいく。

広範囲でみるみる炎を上げ、焼け野原と化していった。

部下達が起動したRの家屋やパブも、火の粉を上げ始めている。

しかし、そこに滞在していた彼等は、早い段階で下のガレージに移動して姿が無い。






 ふと、広間の先にある来客船が出入りする船着場に目を向ける。

最も好きだったそこから、また思い出が蘇った。








 子どもの頃、当時興味を持ったスケッチに、周りの声が聞こえなくなる程没頭した。

何時間にも渡ってそれをするものだから、数回の脱水を引き起こし、体調を崩した。

シャルに叱られ、取り上げられた事で、それまでの鬱憤も纏めて晴らすように怒鳴り、彼女に暴力を振るった。

祖父の耳にその件が入っても、注意をされるのは自分だけであり、彼女が何かを言ってくる事は無かった。






 自分が招いたと言われた、研究所の人手不足。

それを解消すべくゼロを開発し、役立てようとした。

しかし、仕事で人の代わりにロボットを使うという理解を得られず、勝手に処分された事にもかなり立腹した。






 歪んだ変わり者の長が最終的に生み出したのは、死者復活研究組織。

諦めていた学びの実践と実現を、この場所で叶えてしまった。






 部下とは殆ど接点は持たなかったが、考えなかった事は無い。

ろくでなしの施設であるここを、彼等はいつでも去る事ができただろう。

しかし、決して完治しない傷と、消える事のない犯罪歴を背に、ここで生き続けた。




 彼等が向こうで生きていた時。

拘束が解かれ、再び地に足をつけてみても、許された気になどなれなかった。

存在の否定が続き、結局は生きた心地がしなかった。




 彼等は、本当は弱くなんかない。

同じように生き、誰かの為になろうと努めていた事がある。

また、そうできればと願っていた事がある。

なのに、どうでもよくなってしまった。

力が尽きる程に、どうでも。








 遠くの海を凝視する目は、派手に色付いた小さな群れを捉える。

ヘンリーはそれを暫し睨み付けた後、踵を返し、スーツケースを手に部屋から出た。

微かに煙たい階段扉を開け、1つを滑らせながら螺旋を下っていく。

ただ只管、データを最後まで握って。









MECHANICAL CITY


12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。

最終話

キャラクターエンドクレジット

作者後書き


また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。

X/Instagram(@terra_write)

20:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)

20:55~ 次回公開作前書き

21:00~ 次回公開作発表


感謝はお伝えしたい為、お越しください。

次作は、気が向きましたら是非。




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