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#12. Complete 細胞の記憶 [1]
悪戯に笑みを浮かべ、大きく菓子を一齧りして
エンターキーを押した。
機内の受信機が妙に点滅し始めると、雑音が加わる。
それに混ざるのは、この状況に合わない騒ぎ声。
中には女性の叫び声らしき音声までが飛び込み、操縦士達は何事かと顔を歪める。
機長は苛立ち、ヘッドセットを整えながら火災現場の様子を発報するが、応答が無い。
こちらからの声は届いていないのか。
そこへ副操縦士の携帯が鳴った。
それに機長は目を剥く。
「おい馬鹿か!切れ!
お前のそれのせいでおかしくなっちまってるんじゃないか!?
ルールだろ!」
副操縦士は慌てて切ろうとするが、相手はどうも妻の様だ。
「仕事中だ!後でかけなお
「ふっざけんじゃないわ!
仕事なんて嘘こいてんでしょ!?
今どこにいんのよこのクソ野郎!」
しかし彼女の怒りの理由が分からず、取り敢えずそれどころではないと電話を切る。
その時、画面が勝手に操作もしないまま動き始めた。
「何だこれ!?」
画面には、ロックナンバーを添えて保存していた筈の画像が高速にスライドされて映っている。
副操縦士は青褪め、咄嗟に悲鳴を放った。
「メーデーっ!」
「!?何言ってる!
違う!誤報だ!取り消す!」
機長は助手に激怒した。
“副……士!…何の真……だ!
…お前……訳の……らん…画…像……
こっち……送……されて……”
途切れて流れる管制からの声。
それらの画像はどうやら、登録アドレスを通じて他者の携帯電話等に拡散された。
緊急事態にも関わらず、飛び込んだプライベート事情に妨害され、一同は混乱する。
機内に響き渡る、雑音混じりの無線。
機体が不安定になる所、機長がスティックを握って機体のバランスを整えた。
一方、副操縦士は、大量の浮気現場が拡散された事に情けない表情をしている。
ラダーペダルとスティックに、ただ手足を添えているだけか。
機長は更に苛立ち、その肩を引っ叩く。
機長は黒煙を受ける位置から抜ける判断をし、機体は激しく方向転換した。
操縦席で最も確認するディスプレイに目を向ける。
速度計、高度計、昇降計の他、機体の姿勢や機首方位を示す器計が表示される。
常に確認せねばならないそれらが映し出されるのだが、それすらも映像妨害が起き、明確に表示されない。
機長は舌打ちして機材を叩くと、情報発信の為の映像録画が作動しているかどうか、別画面で確認した。
しかし、それこそ砂嵐状態で何も残されていない。
止む無く自分のスマートフォンを取り出し、火災現場と自分の発報の録画を試みる。
だがその画面にはどういう訳か、副操縦士のよからぬ画像がホーム画面になっているではないか。
「お前!いい加減にしろ!
阿保ヅラしてねぇで働け!」
自分ではないと必死に言い訳する彼は、続けざまに呪文のように謝罪の言葉を零している。
発生し続けている通信妨害。
拠点から何かを放たれていると見た機長は距離を取るべく、現場から遠ざかる判断をする。
もたもたしている間に、ヘリの位置が若干低下していた。
フラつく操縦に、敷地内に居た保安官達はポカンとした様子。
彼等は当然、状況が観測できる。
アマンダはターシャの肩を持ちながら、見ていられないそれに大きくそっぽを向き、唇を内側に強く閉じた。
広間の方に出ていたビルは馬鹿馬鹿しいと言いたげに、今にもヘリを貫きそうな眼差しを向けながら腕組みしている。
誰かは首を傾げて円らな目を瞬く。
「何でだ?服も着ないで何をし
それ以上は結構だろう。
ジェレクはルークの片足を引っ掛け、彼を転倒させた。
MECHANICAL CITY
12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。
最終話
キャラクターエンドクレジット
作者後書き
また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。
X/Instagram(@terra_write)
20:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)
20:55~ 次回公開作前書き
21:00~ 次回公開作発表
感謝はお伝えしたい為、お越しください。
次作は、気が向きましたら是非。