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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#11. Almost done 実行
158/189

[19]




※約1790字でお送りします。


#11. Almost done 実行[17]

2体のバランスは崩れ、頭から落下した。

互いが空間を高速に縦割りしていく。

重い体重により、落下速度はみるみる加わった。

その最中、着地の向きの争いが続く。

地面はもう、直ぐそこまできていた。








 アマンダはビルの左腕に掴みかかり、ターシャの口に捻じ込まれていたピストルを、弾く様に抜いた。

ターシャは歯からの激痛に表情を更に歪める。




 アマンダの力は強く、ビルの左腕からは軋み音が漏れていた。

彼女は更に、彼の左手首を掴み、マズルをギシギシと音を立てながら天に向けさせる。

そして、ターシャの喉に嚙まされていた彼の右腕を引いた。

右半身からビルに密着し、彼の左足に右足を回し込んで固定。

目はじっと、彼を捉えたままだ。




「………………」




彼女には鋭い流し目が向けられ、しばらく見つめ合いが続く。

その間ターシャは項垂れ、咳き込んでいた。

前屈みになっていた所、正面の2人にやっと視線を向ける。




 ビルは目を伏せると、アマンダから解放された。

ピストルを引くと、ベストからマガジンを静かに取り出し、中に滑らせる。

弾は、込められていなかった。




アマンダはビルからそっとターシャを振り返り、暫し、自然の音だけの間を置いて言う。




「もう、ここまでにしましょう…

彼はもう、何も言わない。

だから貴方も、何も言わなくていい。

貴方もまた、怖かったのだから」




「………アマンダ…」






 急に音も無く現れた彼女に視界が霞み、ターシャは膝から力が抜ける。

爆音と炎の音は、サウスから未だに放たれていた。

アマンダはその光景を、暫く眺めている。




 表情を変えない。

ターシャはふと、明るい声で眩しい笑顔を浮かべる彼女の顔を、そこに重ねる。






 アマンダはターシャの傍に寄った。

陽光を受け、細かい光を放つボルドーのパーティードレス。

ラウンドネックになった部分に捉えられたのは、数種の花。




「ターシャ、もう少し。もう少しだけ待って。

トップが言った。皆きっと、助かるわ。

彼が言うのだから、きっと…」




「……どういう事!?」




眉を顰め、疑問を投げかけた時。

その場に細かな破片の音が落ちる。






 その微音が耳に入るや否や、巨大な落下音が中庭一帯を轟かせた。

爆音ではないそれに、皆は振り返る。






 あっさり潮風に拭われた薄い砂煙の先で、石畳に減り込みながら未だ掴み合う2体。




「ルーク!」




ターシャは叫んだ。

高さに対する衝撃は凄まじく、2体からは青白い電流の炸裂音が連続的に上がっている。

石畳に深々と減り込んでいるのはジェレク。

ルークは彼から離れると、数ヵ所体を叩いて身形を整える。

肘や膝の連結が部分的に離脱したのを、軽い音を立てて直した。




「やあターシャ。全く…君には驚かされるよ…」




彼女の歪む顔は、君もだと言いたげだ。






 そこへ再び、サウスで2連続の爆発が起きる。

ガラス片の雨が広範囲に降り注ぎ、ターシャは身を怯ませ、しゃがみながら絶叫を上げる。

爆風により放たれた窓から轟々と入り込む潮風で、炎はみるみる内に広く、大きく塔の壁を這い上がる。




「アマンダ。

空気が更に悪くなるから、彼女とノースに居るんだ」




ルークの声にアマンダは頷くと、地面にしゃがみ込んだターシャをそっと立たせた。

彼は微笑むと、ビルに焦点を当て、遺体データに目を這わす。




「君は右肩を負傷した跡があるな。何があった」




ビルは透かさずスライドを引きピストルを構えるが、ルークの右目のレーザー口が剥き出される。






 そこへ、目の前で石畳に減り込むジェレクが、強引に腕を引き上げた。

裏側の皮膚は地面に搔っ攫われ、袖から銀の骨格と3光を露出させる。

彼は腰を持ち上げ、ルークに飛び掛かろうとした。

しかしルークは彼の胸部を即、蹴り倒す。

落下の衝撃を受けたルークもまた、攻撃後の体勢を保つのに若干の不安定さを見せた。






 ビルは無言のまま、広間の方へ移動していく。

ルークは追い掛けようとしたが、足元のジェレクに左足を取られ、視線がそこへ落ちた。

彼はビルの解析までも遮る。






 止まないサウスの爆音。

連絡橋の軋み音が上がり、ターシャはそれに目をやった。

吹き付ける潮風がより高く炎上させ、巨大な火柱を生む。

そこからの熱風で肌が焼ける様に熱くなり、有害物質を含んだ煙が目に染み、涙が勝手に零れた。




(助けてっ……)




 アマンダはターシャを抱き寄せ、ノースへ誘導しようとする。






そこへ、何かの音が徐々に体を振動させ始めた。

胸から叩きつけて来るそれは一体何か。




目を見開き、辺りを見渡す内に、それは次第に大きくなる。

鼓動はやがて、その音に覆い被さった。




地鳴りの様なそれに、アマンダがふと、ターシャの肩に触れて上空に向く。

ターシャがそれに釣られた時、巨大なその影は、敷地に落ちた。






 頭上からは、プロペラ音が降り注ぐ。

黒煙が霞む中、1機のヘリがこちらを見下ろした。










MECHANICAL CITY


12月5日 完結。18時に以下の3投稿を致します。

・最終話

・キャラクターエンドクレジット

・作者後書き


また、SNSにて次回公開作品の発表を致します。

X/Instagram(@terra_write)

20:50~ 完結後 作者感謝メッセージ(必読)

20:55~ 次回公開作前書き

21:00~ 次回公開作発表


読書は自由です。

次作へは、気が向きましたらお越し下さいませ。

しかし、本作を読了頂いたのであれば、きっと…




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