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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#11. Almost done 実行
157/189

[18]




※約1800字でお送りします。


#07. Cracking 処分 [12][15]

シャルの破壊処分の最中、連絡橋からWestロビーにやって来たターシャ。

その後、レイシャと遭遇した場所です。



#11. Almost done 実行 [5]

研究室を放火した後、連絡橋に出ると、Westと記されたそこに向かって駆けた。







 ウェストに入ったターシャの足は、一層早まる。

誰も居ない、サウスと似た廊下を駆けると、階段扉を発見。

そこに飛び込んだ。






 再び薄暗い所を駆け下りる中、咳と嗚咽が続き、足が縺れ、転倒。

だが、尚も立ち上がる。

2つの“走れ”という言葉が木霊していた。

諦める訳にはいかないと、背中を押すその声を信じ、突き進む。






 1階に辿り着き、ロビーに繋がるであろう扉が目に飛び込んだ。

フラつきながらノブに手を掛け、大きく押し放つ。




 ロビーに駆け出すなり、また転倒した。

電球色がぼんやり灯る空間。

冷たい大理石の床に、薄く自分の影が落ちている。

殺風景なそこは数時間前、発言に激しく温度差を見せる女と、保安官達の戦いを目にした場所。

息を荒く立てながら包み泣き、目の前の玄関から見える光を求める。






 誰も来ないのではないか。






不意に弱気になる自分を拭おうと、頭を振る。

勝手に零れる涙は顔を濡らし、先程よりも視界がぼやけていた。




 煙の影響もあり、視界は更に歪み始める。

手足が増え、残像と化し、透けて見えた。

鼓動は全身を打ち、脳が揺れる感覚に陥る。




 それでも起き上がった。

目の前のガラス扉から、光が射し込んでいる。

ターシャは艶やかな床を蹴り、ようやく、地上へ飛び出した。








 これまでよりもいい空気が鼻に抜けていく。

汗ばんだ体を、潮風が這って冷やした。

勢いよく飛び出した足が、急停止する。

正面や左右を見回したそこへ、真横からの気配に大きく振り向いた。




そこに影が現れ、彼女は瞼を失う。






 射し込む陽光をレザーに受け、光沢を瞬時に見せる。

それは移動と共にサングラスに移り、奥のダークブラウンの瞳が垣間見えた。




 ビルは、ターシャの荒げる息をスライド音で断ち切り、左手でピストルのマズルを向ける。

それに、一気に血の気が引いた。




 彼はそのまま急接近するなり彼女の肩を掴むと、ガラス扉まで押しやる。

そして、その首に右腕を横に噛ませ、喉を押される彼女は声を奪われた。

息を吸うべく反射的に彼女が口を開けた時、彼は左手にしていたマズルを捻じ込む。




 涙の悲鳴が上がり続ける。

ターシャは縋る様に、両手で彼の腕に必死に掴みかかって抵抗する。

殺さないなど、嘘ではないか。

不意に過ったルークの言葉は消える。






 ビルは、どのアンドロイドよりも精悍に見えた。

状況によっては漲る殺意も異常であり、正に今、それが犇々と歯を通して伝わってくる。

その態度は、ただ相手がターシャであり、何も出来ないと端から見切っていると言う訳ではない。

それ以上の何かが常に彼を達観に導き、勝ち誇っている(さま)を滾らせていた。






「してやったか、ターシャ・クローディア」



口に捻じ込まれたマズルに、歯がガクガクと叩きつけている。



「お前の行いもまた、認められる防衛か」



しかし、彼女は表情を変えて見せた。

抵抗する両手は震えても、力を緩める事はせず、有りっ丈の怒りを込めて睨みつける。




「お前が放った火をどうにか救助者と突っ切り、脱出できた2人は薬品による暴露や、全治数週間の火傷で重症だ。

あの場の延焼は凄まじく、言うなれば火の洞窟。

10秒遅ければ爆死だ。どうだ、残念か」



激しく震える口から、唾液が伝う。




 ここを燃やし、煙を上げる事で外部に知らせたかった。

燃え広がり方は目まぐるしいものとは言え、この場所は命の危険を感じてならなかった。

守りたいが故の反発だと、ただただビルを睨み続けた。




「ああそうだ。我々は、罪人。

故にお前は、ここが存在してはならないと判断し、己の策を実行した。

向こうがそんなお前を認めるならば、結構。

だが、どんなにお前が認められようと、事実は変わらない。

お前は、人を殺しかけた。

怪我までに留めるだけでなく、不要な放火をした。

負傷者は更に出る。

それがお前という正義の望みならば、こちらも出方を変える」




トリガーに触れる微かな音がした。

ターシャは青褪め、みるみる目は乾いていく。




「かっけぇーなー…そちらさんはよぉ……

俺がもっと…つえーもんにしてやるよ……」




握るピストルもまた、震えた。

声をそのままに、ビルは意味深に低く溢す。

喉が震える様なそれは、Rとは思い難い。

貫く眼差しは彼女を見ている、のではないのか。




「お前が我々の罪に対し、とやかく言うのはここまでだ。

何故ならもう、お互い変わらない」




口調を戻した彼はマズルを更に奥へ入れ込み、ターシャは嗚咽する。




 刹那、疾風が互いの間を切った。

飛び込む素早い動きは、瞬く間に決まる。

ターシャの視界に、フワリと花の香りを含んだココナッツブラウンの長髪が、潮風に靡いた。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(12/5完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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