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※約1600字でお送りします。
#08. Reboot 脱出 [7]
#11. Almost done 実行[15]
ガラス扉が開いたと同時に、慌てて上がって来たハッカーの部下が目を見開いた。
2体が真正面から激しく、また、高速に駆け込み階段扉へ消え去るのを見送る。
陽光が降り注ぐ拠点内。
異臭を含んだ厚い黒煙が潮風に立ち込め、大気と激しく混合する。
それは快晴の空をみるみる霞ませ、陽は蜃気楼に歪んでいた。
ルークとジェレクは、イーストの廊下に入った直ぐ傍の階段扉を蹴破り、ステップ関係なく飛び降りて下る。
火災現場に向かう最中、ルークは後方のジェレクのデータに目を泳がせた。
どういう訳か、彼にも遺体データは存在するが、家族の詳細は無く、性格や特性の情報が極めて薄い。
そんな疑問が浮上すると、彼は決まって言う。
「何でだ?」
踊り場に着地すると、その階の扉を左肩で打ち破り、廊下を逃走。
その間、近辺をうろつくビル、アマンダ、ターシャの位置を特定。
しかしそこでも、ルークは走りながら疑問が浮上した。
ビルもまた、ジェレクと似た情報量だった。
妙なそれらにルークは目を凝らす。
廊下を走る途中、不意に左側のドアを打ち破り、侵入。
機敏に室内へ消えた彼を、ジェレクは速やかに向きを変え、入室。
そこは部下の誰かの部屋。
ジェレクは駆け込むなり、辿り着いた端のキッチンから気配を察知。
ルークがジェレクの左腕に飛びつく。
寸秒目を合わせながら、ジェレクはルークを大きく肩で弾き返した。
カウンターキッチンになったスペース。
弾かれたルークの背中を受けた壁に、巨大な音を立てて亀裂が走った。
そこら中、細かい破片が飛散する。
その場に座ったまま、ルークの目が高速にジェレクを這い始める。
だが彼はそれを邪魔するべく、背中のショットガンを回し込みながらスライドし、銃口を向けた。
「俺の解析する為にわざわざ寄り道か。余計じゃん。
てめぇの女は外だ。
行かねぇなら、こっから投げ飛ばしてやるぜ」
「気性が荒いのは元々か」
言い終わりにルークは、颯爽と左のシンクの縁に攀じ登り、カウンターを越え、その向こうに広がるリビングへ横滑りして着地。
目前にジェレクを捉えるなり、ルークは再び彼に目を這わす。
体の細胞を隈なく探っている様だ。
だが、それを察したジェレクは持っていたショットガンのストックで、ルークの目を狙い、打撃しようとする。
それを喰らうまいと掴み止め、ルークはそのまま彼を後方へ押しやった。
ジェレクに接近した所で、更に解析は進むが、あまりに手掛かりが無い。
ルークは彼の髪、肌、歯、体毛、爪に焦点を当てていく。
更に首元には、凝視してやっと分かる程度の痣。
彼の左側から細く伸びるそれは、消す事に努めた様子だ。
だが、視界が突如天井に変わる。
ジェレクが頭突きをし、解析を遮ってきた。
互いが目を合わせるまでの間。
銃口が向けられる音に、ルークの左目が迫り上がる音が合わさる。
「解析するな。その目、吹っ飛ばすぞ」
「破壊の指示は出てない。
出ていても受けないけど。
トップに怒られるよ。
暴発を避ける最新技術なのに」
ジェレクはショットガンを下げるとルークの両肩を掴み、窓に投げ飛ばそうと反動を付け始める。
それをルークが遮ると、彼の両肩を掴み、壁に向かって投げ飛ばした。
突き飛ばされた先にコンポがあり、衝撃の影響で突如、ジャズの音色が流れ始める。
それは荒々しい空間を、湿り気のある雰囲気に無理矢理変えようとしてきた。
ルークは瞬きを止め、つい、眉を2秒顰めて首を傾げる。
音に動揺してしまった隙を突かれ、ジェレクの左に立つスタンドライトが右横肩に激しく入った。
衝撃で電球傘が根元から破壊され、床にガラス片が飛散。
ジェレクはポールを握り直し、即、ルークの腹と喉を突く。
そのまま更に下から振り上げ顎、最後は頭頂部から一線縦に振り落とす。
前のめりに体勢を崩したルークだが、床にめり込む寸前で四つん這いになり、体勢を保った。
ジェレクが操るポールが再び、頭上から振り下ろされる時。
ルークは、争い続ける最中に横転していたベンチ書架を掴み、透かさずポールを防御。
ジェレクが掴むそれは呆気なく両断され、テレビの液晶に打ち当たり、ひび割れが太く走った。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。