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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#11. Almost done 実行
154/189

[15]




 イーストに続く連絡橋に出ると、黒煙が忽ち高く立ち込める。

それは再び、咳の症状を(もたら)した。

ただの煙ではない。

吸い過ぎては毒になる。

ヘンリーは足早にイーストに向かった。

その背後には、様子を気にするルークが付いている。





 そこへ、正面のガラス扉からジェレクが現れる。

部分的に焼け焦げた服装は、細かな穴を見せていた。

(すす)も僅かに観測できるが、動きが速かったか、大きな損傷は無い。

彼の背には、退室する前に装備したショットガンが掛かっていた。






「部下共が馬鹿みたく消火活動してるぞ。

被害を抑えようと。

補佐官の指示の元、俺達は外側のみに付いてる。

あいつ等、偉くここが好きなのな。

あんたの言う最終判断とやらに、ピンときてねぇ様だぜ。

俺等の方が空気読めてんじゃん」




強風と黒煙に服や髪が小刻みに靡く。

その中を時折、火花が舞った。

ヘンリーは小さく溜め息をつくとスマートフォンを抜く。

その横で、ルークが目を丸くさせた。




「消火?できる訳ない、それじゃ死者が出る!

ターシャはアマンダに任せられる。

俺、下に行くよ」




途端、彼は来た通路を引き返そうとした。

しかし、ヘンリーは左手で即座にそれを止める。




「死なせる訳にはいかない。

それはトップも同じだろう」




それでも彼は、何も言わず静かにルークに首を振り続けた。






 そこへ再び、下から爆音が轟く。

連絡橋が激しく揺れ、下の階でガラスが飛散する音がした。

炎の先が見え、今にも上階へ燃え移ろうとしている。




「おい新型ぁ」




ジェレクの声にルークが視線を向ける。

彼は颯爽と接近すると、ヘンリーの腕から容易く彼を引き剥がし、連絡橋の縁に背を叩きつける。

すぐさま彼の胸倉を掴み直し、今にも真下へ落とそうと、縁の外へ彼を押し出していく。




「てめぇの任務はあの放火魔の護衛だ。

とっとと付いてろ」




ルークの上半身が縁の外へ出ていくが、ジェレクの掴みかかる腕にしがみ付き、落下を止め続ける。




「負傷者が増えてる!

引き摺ってでも下ろさせる!」




「トップが話をつける」




「それでもだ!」




ルークはジェレクを大きく押し返し、イーストから火災現場のサウスに移る判断をし、ガラス扉に駆けた。

ジェレクはそれをすぐさま追う。








 ガラス扉が開いたと同時に、慌てて上がって来たハッカーの部下が目を見開いた。

2体が真正面から激しく、また、高速に駆け込み階段扉へ消え去るのを見送る。

彼は、緊急事態を伝えにやって来た。




「トップ!この煙のせいで、厄介なのが来る!

俺が時間稼ぎするから、早くガレージ行きな」




彼はそう言って、常に抱えている自分のラップトップをヘンリーに揺らして見せる。

悪戯な様子を含めた得意気な顔は、どこか楽しげだ。




「後、もう敷地内のデータ抹消と、必要な分は移行させた。

ボートの位置特定させないように、ガードも完璧。

トップがする事だけに集中しなよ」




そう言って再び屋内に戻ると、ヘンリーも即座に中へ入る。






 イーストの屋上で、企みを実行するつもりか。

やって来た彼は、階段扉に向かおうとする。



「お前…」



いつも掠れた聞き取りづらい声でも、部下は振り向く。




しんとする住居が並ぶ廊下には、轟々と鳴る火災音。

数秒目を合わせると、ヘンリーは続けた。



「……様に…なったな…」



「ああ。もう蹴落とさせやしねぇよ」




ハッカー集団から排除された彼。

とある廃退地区の射撃場で雇われていた彼は、その時の扱いもまた酷く、解雇されるところを引き取った。






 ヘンリーの顔の様子も、分析し慣れている。

何かを心配するような目と、言葉を選んでいる様子。

その顔を見た彼は、階段扉から顔だけを覗かせて言った。




「ご心配無く。ちょっと揶揄ってやるだけさ。

後でな!」









MECHANICAL CITY


本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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