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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#11. Almost done 実行
153/189

[14]




愛だの家族だの、もう耳障りでならない。

それらが本来どういうものなのかを知る事すら、もう無駄だった。






「ターシャの愛するという説明には

“する”の他に、“してくれる”、“される”

という言葉が使われていた。

従うという事ならば、任務と同じか?

頼まれた事をやり遂げる事も、愛するってやつなのか?



 でも、その息遣いと体温と表情からは、一致しないな。

大事にされ、守られる事も、愛する事であるのなら、トップは何故そんなに長く痛みを伴うんだ?



 ……ありがとうってやつを、言われていないから?

頼んだ事をしてくれた時、感謝する事を意味する様だけど、それが有るのと無いのとで違ってくる可能性があるのか」






不味い空気に、少々咳が出る。

そこへ更に、後味の悪いやり取りばかりが続いた。

しかしこうも聞き入ってしまうのは結局、彼に興味がある。

そんな場合ではないと言うのに、いつまでも自分は、厄介な生き物だ。

ヘンリーは、顔を正面に向けて言う。






「俺がやるそれは一方的なもんで、その子が言う心地いいもんとは別もんだ。

環境が違えば生き方も、得るものも違って至極当前。

俺は不要な殺人鬼だ。

感謝なんてもんからは無縁だ。

ここまでだ。もう喋るなっ…」






震える声には、悲しみと焦燥が乗せられていた。

これまでよりも早口で、最後は吐き捨てる口調になる。




発言を止めたルークを前に、ヘンリーは項垂れた。

左腕がゆっくり耳を塞ぎ、手は頭に触れ、髪を握る。

それは、今にも毟り取りそうだ。






ルークは彼に近付くと、その震える肩に手を差し出す。




「どうしてデータが無いのか、よく分かったよ。

もう、思い出す訳にはいかないんだね。

………そんな風になってしまう環境は、俺も嫌だよ。

それもまた…簡単に許す訳にはいかないな」






 廊下から差し込むサイレンと警報ランプは、2人をぼんやりと照らし続けている。




「行こう」




ルークが手を差し伸べても、ヘンリーはそれを横切るだけだった。

その足取りは錨を引き摺る様で、フラフラと武器庫に向かっていく。




過去に対する憎悪を滾らせていた。

汗で湿った髪の隙間から垣間見える目は、生気を失っている。






 左手は、(おもむろ)にハンドガンを掴んだ。

ボディの黒とシルバーが、警報音と共に放たれる赤で点滅する。

外向きに角度が付き、静かにマガジンが高音を立てて滑走。

殺意の重量が加わると、握り、静止する。

その間、嘗ての数々の悲鳴や苦痛が脳裏に走り、消えた。




1丁と1人の、時化(しけ)たちっぽけな空間。

変わり果てた利き手に視線が移ると、鼻で笑い飛ばす。






 ヘンリーが右側のベルトフックにホルスターを装着した時、これまでよりも大きな爆音がし、地響きがした。

彼はデスクのラップトップを取りに戻ると、ルークの背後を通過し、廊下を出た所で立ち止まる。




「………あの子と…居てやれ…」




「そうするよ。

ところで、何でトップまで銃を持つんだ?」




 廊下からの連連たるサイレンと共に、互いの体は赤い点滅を浴びている。

それに何も答えず、彼はその場から立ち去った。




しかしルークは指示を聞かず、ずっとその背中を解析し続ける。




どのくらい前からなのか、体内の働きがずっと不安定だ。

不整脈も観測でき、全身に重みを感じる程の倦怠感があるのか。

それを可能な限り隠してきている。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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