表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#11. Almost done 実行
152/189

[13]




※約1630字でお送りします。







「無駄か。

発言の前後から解析すると恐らく、必要が無い、という意味としておくか。

であれば、何でだ?

無駄なんて事は、本当に有り得るのか?」




ヘンリーはその言葉で、何かを思い出した様に目を見開く。

一方ルークは、怒鳴った事を一時置き、一切データが存在しないヘンリーを探り始めた。








「デスクに式が書かれた紙がある。

それで例えるならば、目的に帰着する為に数々の工程を踏むが、そこには必ず記号もある。

それらが無ければ辿り着けない。

この例から、必要が無い物なんてのが、本当にあるのか?」






互いの目が合う。

不思議だった。錯覚であれ信じ難い。

ガラス細工のルークの目は、微かに震えて見えた。






「復活実験の為に、向こうのルールに背いて罪を犯す選択をしたにしても、そこには必ずファクターがある。

否定されたとしても、その先に残る物があるだろう。

それは正であれ、誤であれ、だ。

この場所や組織というデータは、人や環境、つまり未来に影響を齎す可能性もある。



 トップが無駄であるならば、部下はここに居ないだろう。

部下が無駄であるならば、トップもまたここに居ないだろう。



 必要が無いという表現は、未来も機会も無いという事もまた、意味できる。

………これも、目に見えない物について考えるって事か?」




どこか宙を見て、円らな目を瞬かせている。

そこにはまた、ロンの姿が映っているのか。








 サイレンが止む事の無い、暗い空間。

そこに漂う異臭の靄の奥で、ヘンリーは目を閉じて笑った。








 生まれるのが早過ぎたか、否か。

今更どうでもいい事が、ふと過る。

今の向こうでは一体、目の前の彼はどう受け取られるのだろうか。








 今にも崩れそうな足で、体を支え直す。

怒りをぶつけたルークだが、体勢を整えようとするヘンリーの肩を掴み、それを補助しながら言った。








「この生き方を選択したのは、確かに部下やトップ自身だろう。

だが、その選択をする事になったファクターは、本当は何だ?

特にトップを実際に見ていても、コードを見ていても、妙だ。

……………ヘンリー・クラッセン。

君は…もっと違ってたんじゃないのか…」






間を置き、ルークは言葉を待ち続けるも、彼はまだ、何も言わない。






「家族が居ないとトップは生まれていない。

何でだ?

ターシャが言う、愛されたという事に経験は無いのか?」






そう。

そうやって何でも、気になると問い質してしまう。

その目はいつだって真っ直ぐで、悪意など無い。

無かったのだ。






「…………あれは模範的な幸せもんだ……

殺意を抱く様な生き方とは無縁だ…」






口が、勝手に動いた。

充満する異臭の影響で、頭痛に目が眩み始めている。






「殺意……さっき俺が示したものか……

何でそんなものを抱く様になったんだ?」






崩れて粉々になった過去が、揺れながら、弱々しく形成され始める。

そしてまた壊し、無かった事にしようとする。

そんな葛藤の繰り返しは、全身が疼く。






「心拍が上がってる……

それ、あまり息が整わないだろう。激痛か。

抑制するのに震えている……それは……

表情筋の様子を見る限りだと、本当は寂しい……

ずっとその繰り返しをしていて…

眼振があるのは、怒りもあるけど…悲しい、か。

でも涙を流さず睨んでる。



 ターシャは全て表に出し、次々表情を変えていた。

熱や震えも、それをする事で落ち着いていて、声も通ってた。

でも、トップはそれをしない。

してもいい筈だよ。部下達もしてた」






 汚れ切った今、それらもまた不要だろう。

ヘンリーは疲労に満ちた顔のまま、やっとルークに横目を向けた。






「………力や歩幅を合わせる事……

過度に問い質さない事……

求められる存在であり続ける事……

その為に…持っている物を仕舞い…

己の改新に向けて耐える事……

全て従うべき事だった……

そうして得た………最高の愛情だろう…」




終いには声と視界が揺れ、力無く笑って見せた。




見え隠れする記憶は黒い砂嵐と化し、それらは拭われまいと纏わりつく。

ルークは、彼の体と、光を失った眼差しに目を凝らす。






「その、言てるそれらも愛ならさ、トップの家族も、トップの為にそれをした?」









MECHANICAL CITY


本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ