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※約1600字でお送りします。
署では電話が鳴り響く。
書類、ファイルが忙しなく開かれる音や、データ分析するタイプ音。
汗水流す警察達の忙しない足音は、蠢く虫か。
四方八方で騒いでいた。
臨時停泊施設である島からの情報は瞬く間に広がり、それはターシャとルークの両親の耳にもすぐに入った。
定期的に訪れる沿岸警備隊だが、ボートがいつもと違っていた事。
訪れる警官が度々違う事はあっても、全員見た事がないのは初めてだった。
また、中でも特に2人の警官については若過ぎる印象を受けた。
通報したロンの口から更に零れたのは、比較的目に付く時間が長かった、警察手帳に記されたビルの名前。
そしてターシャ、ルークの名前だった。
現れた警察の特徴を聞いても、沿岸警備隊の中にビルは勿論、他に誰1人存在しない事も発覚。
また、訪問予定日でなかった為、警官に偽装して現れた事も直ぐに判明した。
これに合わせ、海洋バイオテクノロジー研究所の存在について綿密な調査が入り始める。
実際に新薬が採用された実績も数多くある施設。
古くから独立しているそこの存在の真実を明かすべく、直接捜査に訪れる判断が下された。
また、入れられた情報の中に飛び込んだのは、捜索が断念されたルークと、死亡した筈のターシャの存在。
彼女の両親は特に理解に苦しんでいた。
娘が何故急に、生きていると言われるのか。
これから葬儀が始まろうという時に起きた、奇妙な事態。
急遽、遺体の確認が再度行われ、その事実は発覚した。
死亡判断を下したのは、部分的に実物の人体パーツが使用された、恐ろしく本人に近い人形だ。
刑事が電話の向こうの捜査班と話している。
見た事も聞いた事も無い施設から提供された情報を得た両親。
それは、どう考えてもターシャだった。
「入院先の病院と、カメラも調べてくれ。
遺体がすり替えられているならそれが映り込んでいるか……いや…
そんなあからさまじゃないか……
映像が摩り替ってるかもしれない。
その切り口を探してくれ」
刑事の指示に身を寄せ合い、2人の両親は震え上がっていた。
そんな彼等に、刑事は近付き腰を下ろす。
「どうか落ち着いて………必ず突き止めます。
心中はお察し致しますが、もう少しだけご協力頂きたい」
間を置くと、互いに見つめ合う。
「入った情報によると、その研究所では死んだ人をロボットにしているという、ターシャの発言がある」
それにルークの両親が震え、母親は短い悲鳴を上げた。
夫婦互いに身を寄せ合い、背や腕を擦り合いながら、息を必死に整える。
「ルーク・ルブラン……
事故当時の調査から、生きている事は考えにくいのですが……
目撃情報どころかそれを越え、停泊施設のオーナーは彼と対面し、会話までしていると」
「ああ神様っ!」
恐ろしい話にルークの母は再び声を上げる。
ターシャの両親も、言葉を失った。
「また、名前は特定できませんがご存知かどうか。
ターシャの親友の女性も居合わせていたと」
「まさか……アマンダ!?」
ターシャの両親は驚きを隠せないまま、刑事に彼女の事を告げる。
その後、彼女の両親にも早急に連絡をした。
「これがもし事実なら…
死体損壊等罪や、その他重犯……
重罪という一言では済まされない…」
背後では犯人の特定捜査が進み始める中、ある名前が浮上する。
「元々の設立者は、既に亡くなってるアルフレッド・クラッセン。
その後継者はヘンリー・クラッセンとされてる。
だけど今は辞めて、血縁関係が無い現オーナーに、その研究所を引き渡してる。
でも、それはどうも架空人物。
誰かが代わりに名乗ってる可能性が高い。
前代表である本人か、仲間がいるならその可能性も」
「クラッセン?あの有名科学者か?」
「関係を調べたところ、それは祖父と父親。
ヘンリーはその子孫ね。
その名を伏せて、研究所にいるのかもしれない。
父親に確認を取るわ」
「一体何で……」
次から次へと舞い込む情報は、署内を大混乱させていった。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。