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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#11. Almost done 実行
144/189

[5]




 ターシャは不意に、両耳に触れる。




細く、白い糸が2本捉えられた。

それらは美しく光り輝きながら、彼女の頬から耳、髪を、まるで手で撫でる様に這って擦り抜ける。

聞こえていたアマンダの声が糸となり、そこにもう1つが合わさり、太くなる。




 それらは優しく、焦っていた心をみるみる癒した。

明瞭な視界が生まれ、涙すらもそれらは拭う。






 気が付くと、階段の半ばで立ち止まっていた。

何が起きたのかは分からない。

しかし、足はやっと前に進み始める。




 正面のドアにそっと近付き、耳をすませた。

物音を感じないそこを僅かに開くと、同じ様な部屋が再び並んでいる。

だが、妙だった。

まるで何処かに人が偏っているのか、誰も居ない。






 廊下に足を忍ばせ、背を屈めて移動し、部屋という部屋を横目で確かめていく。

その途中、窓の外に目を向けた。

両脇のイーストとウェストに沿って、ずっと見下ろしていく。




 中庭に目が留まると、ゾロゾロと部下達が行き来していた。

出入りする先は、4基で最も低い塔。

忙しなく何かを運搬しているそこには、夜中に広間で見かけた人達も居た。




「研究所……」




ターシャは、そこが恐らく成り済ましている施設だと見た。

組織に、何か動きが生じている。

あの男が言っていた決定事項とは何か。

警察が来る事に怯む様子も無く、冷静沈着な態度だった。

何が奴をそうさせているのか。






 頭上では小さな爆音が響き、天井から振動を感じた。

見上げた途端、それに合わせて警報が鳴り響く。

目覚めて脱走した際を思い出させるそれは、建物中を轟音で満たす。




ターシャは怯み、戸惑った。

その場の白い屋内は、瞬く間に赤点滅を見せる。

このままでは、誰かが消火しに来る。




 空咳が喉を刺激する。

嘔気も催す中、ここから距離を取ろうと、赤く点滅する廊下を駆けた。

その場の点滅は視界を酷くチラつかせ、足が勝手に重くなる。




建物全体が、再び短い爆音に揺れた。

身を縮め、外に出るべくドアを探す。






 冷や汗が滲み、悪寒もする。

倒れるものかと意識しながら、懸命に何かに縋る様に突き進んだ。

顔は、襲い始める倦怠感に険しくなる。






 そこへ、壁から陽光が広く射す間が見えた。

連絡橋に続くガラス扉を発見すると、次第に目が開き、足は早まる。






 全体重をかけて押し開けると、風が擦り抜けた。

焦げ臭く、他の異臭も含んだ煙が目に沁みる。

片目を閉じ、橋に飛び出すと、真っ青な空に光り輝く陽光が迎え入れた。




太陽は眩しく、強い日差しに手を翳すと、進行方向に佇むガラス扉を見る。

Westと記されたそこに向かって、一目散に駆けた。




挿絵(By みてみん)









MECHANICAL CITY


本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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