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【Warning】
10/20~10/22 人 対 人の戦いが行われます。
刃物、シリンジ、暴力、流血、人体パーツ描写が発生します。
行き着いた隣室もまた、最悪だった。
同じ様な薬品や医療器具類がステンレス棚に連なり、保管されている。
学生時代に見た事がある、科学室に思えた。
そこには人体に関する書物や、複数並ぶ綴じられたファイルが棚に並んでいる。
その背表紙の文字からして、何かの論文か資料か。
不気味な空間を進みながら、目に留まった薬品に触れては叩き割る。
奥へ突き進み、目を這わせている内につい叫声を上げてしまった。
そこに佇むのは、生々しい直立型の全身骨格模型、全身筋肉模型、男女別の人体解剖模型。
衝撃的な画に背後の棚に背をぶつけ、目を逸らす。
固唾を呑み、薄目を開けて環境に慣れようと、模型の奥に恐る恐る顔を向けた。
未だ何か並んでいる。
脳が勝手に特定していき、虫唾が走った。
ガラス戸の棚に並ぶのは、人体パーツモデルだ。
大きさが違う複数の皮膚構造模型は、恐らく倍率の違い。
歯や顎の模型、数種類並ぶ眼球模型に耳鼻模型。
どれも生々しく、青褪める。
人型の模型は、トルソーまでが限界のターシャ。
鳥肌は治まらない。
目を覆い、大きく呼吸を繰り返す。
だがその呼吸も異臭で辛い。
空咳に、ジワジワ襲い始める気分不良。
グズグズするなと身を翻し、模型コーナーはそのままに、反対側の薬品を次々激しく床にバラ撒く。
その手先から腕にかけて、先程まで無かった微かな痒みが、皮膚や目に発生する。
薬棚を後に、その部屋から出ようと向きを変えた時。
目に留まったのはアルコール消毒液の数々。
見た事が無いパッケージには様々な度数が記載されており、どれもリスク表示として炎にスラッシュが入っている。
それに飛びつくと、脇に複数抱えて廊下に出た。
液体を混合させながら、フロアを見る見る荒らし続けていく。
その最中、給湯室に辿り着いた。
入室すると、そこにあるのはガスコンロ。
辺りを見渡せば、飲食物にマグカップ、スプーン等も棚に並んでいる。
そして、大量の木製のマドラーを見つけた。
ターシャはボートでの移動中、焼却現場での事を思い出していた。
シャルが入れられる前後で、焼却炉の中で音の変化があった事。
あの現場に居た周囲の格好や、上層部の者からの注意喚起。
そして、妙な気分不良を発症した事。
見つけたマドラーを全て手にし、コンロを点火する。
息を切らせ、手を震わせる中、ここで目にしたあらゆる恐怖が次々浮かび上がった。
それはやがて、朱く揺らめく炎と化す。
それを両手で握り締めると、来た道を足早に引き返した。
部屋だけでなく、フロア一帯が異臭に包まれている。
鼻を突き、喉を素早く通過すると即、胃に到達する。
生唾を飲みながら、薬品に塗れた1室の入り口まで辿り着いた。
そこで視界に飛び込んだのは、手を負傷した男。
片手にはしつこく、眠剤を充填したシリンジを握っていた。
だが、対面したターシャを見て絶句し、その手が震え始める。
「お前…馬鹿!今すぐ消せ!」
「近寄らないで!」
ターシャは脅す様に、男や隣の部屋に火を向け、怒鳴った。
マドラーの先端に灯る火は、ジリジリとターシャの手元に向かっていく。
彼女は今、迫り来る熱さも気にせず相手に怒りを滾らせていた。
「どっちが馬鹿よ!
全部あんた達がしてきた事じゃない!
人を強引に扱い、暴力を振るった!
同じ目に遭わないと分からないなら、そうしてやるわ!」
「分かった!だからさっさと下げろ!」
そこへ、ターシャに向かって薬品のペットボトル容器が投げつけられ、床に乾いた音を立てながら転がった。
2人が振り向くと、負傷した女が廊下を這って、痛みに息切れしながら血相を変え、睨みつけていた。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。