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【Warning】
10/20~10/22 人 対 人の戦いが行われます。
刃物、シリンジ、暴力、流血、人体パーツ描写が発生します。
すぐ隣の部屋に入った。
また同じ様な部屋で、薬品が棚に並んでいる。
ターシャは目にも止まらぬ速さで、片っ端からそれらを落とし、撒き散らかした。
瓶は割れ、バッドに浸されていた医療器具も落下し、床に散乱する。
飛散した薬やガラスは、みるみる混合していった。
見渡す限り、まだまだ並んでいる。
棚の間を縫って奥に進み続けると、横幅が広く、背の高いガラスの引き戸付きのステンレス棚に目が留まった。
「きゃあああっ!」
上2段に眼球。
下2段に歯が、それぞれ瓶の中で液体に浸され揺れている。
堪らず顔を伏せ、背後に衝突。
そこにはシンクがあり、横にメスが大量に洗浄された状態で並んでいる。
ターシャは目を見開き、1本をポケットに入れようとした。
その時、部屋の入り口から声が上がる。
駆け付けた2人が最悪の状況に引き、血走った目を向け、ターシャを追う。
ターシャは歯を鳴らし、隣室に続く通路を進んだ。
しかし、追いついた女がターシャの左肩を背後から鷲掴みする。
二手に分かれて追い込む策か、隣室から回り込んできた男が、ターシャの正面に現れる。
瞬時、時が止まる。
考えろ。
ターシャは、持っていたメスを握った。
「いい加減止まるのね!」
女は怒りに任せ、強引にターシャを引き寄せる。
体が接触してしまった。
ターシャは、右手で女の右大腿を突き刺した。
激痛の叫びに呑まれながら、共に後ろ倒しになる。
女は反射的に激しくターシャを突き飛ばす。
メスは、大腿に刺さったままだ。
正面から来た男は堪らず、更にターシャを脇へ払い除け、負傷した仲間に駆け寄った。
負傷箇所を目にするなり、ターシャを肩越しに睨みつける。
棚に突き飛ばされた彼女の背後には、先程目にした人体パーツが液の中で大きく揺れる。
それらに恐怖していた事も忘れ、彼女はボートでビルが捨てた機械針を抜き取り、男に向けながら徐々に隣室の入り口の方へ後退った。
次々武器を使う彼女に、男は目を疑う。
荒い息遣いが満ちる空間は一時、激痛に悶える女の声だけになる。
男は焦燥するも、ターシャを睨むだけに留め、痛みに嘆く仲間に向く。
その隙にターシャは、男が回って来た隣室へ姿を消した。
足止めされた2人は、細かいガラスの破壊音を背に、目を激しく左右させる。
現状から予測される事を、必死に探った。
あらゆる薬品が混合し合う事で発症するのは、気分不良と頭痛。
また、揮発性が高い液体が多く撒かれた事で、鼻を突く臭いで充満している。
発火性、引火性があるものも含むそれらが飛散する事で、リスクがみるみる高まっていた。
男は痛みに声を上げる仲間から一時離れ、部屋を飛び出し、廊下の窓を開けた。
既に咳が襲い、目が若干眩み始めている。
再び入室すると、仲間の止血と応急処置を始めた。
「いいから!早く追って!」
「置いて行けるか!空気が悪過ぎる。ここから出るぞ」
「追って!止めないと酷くなる!
直ぐそこに居るのよ!?私は耐えられる!」
先程からずっと、隣室であらゆる破壊音が鳴り響いていた。
男は舌打ちするが、それでも止血を優先する。
メスが瞬時に抜かれた勢いで、女は一驚を上げた。
男は近辺の引き出しを漁り続け、見つけたガーゼやタオル、布を合わせると、彼女の大腿をそれらで何重にも巻いて締め付ける。
その激痛に再び、痛みの声が上がった。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。