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【Warning】
10/20~10/22 人 対 人の戦いが行われます。
刃物、シリンジ、暴力、流血、人体パーツ描写が発生します。
部下2人に連れられ、ターシャはエレベーターから強引に押し出される。
そこには、見覚えがある白い空間が広がっていた。
ガラス戸の部屋が並び、薬品特有の臭いが染みついている。
ここまでの移動中は騒ぎ立てていたが、抵抗を止めた。
じっと正面を睨んだまま、静かに策を練り続けている。
大人しくなった彼女の腕を、まだ部下達は放さない。
彼等もまた、静かだった。
その顔には不安が見られる。
ガレージでの話を思い出し、何かを感じているのか。
男は、1室のドアを開けた。
以前、無理矢理乗せられた同じステンレス台がある。
しかし、あの部屋はシャルとビルの戦闘で破壊されていた。
ここはまた、別の場所だろう。
不意に体が浮き、ターシャは短く声を上げた。
体を激しく揺らすも、そこに叩きつけられ押さえ込まれる。
「今度こそ大人しくしてもらうわよ」
両側から2人に押さえつけられ、男は片手で素早く、用意していた眠剤を充填したシリンジを取る。
顔にふと影が落ち、通過していった。
左腕の血管に触れられているのを感じ、鼓動が早まる。
まだだ。
2人はターシャの腕に集中する。
そして、触れられていた手が止まった瞬間。
ターシャは上体を素早く起こし、男の顔に唾液を吐き捨てた。
短い叫び声に、シリンジが離れる。
ターシャはその手を激しく蹴ると、それはあっさり落下した。
「あんたねぇ!」
女がターシャを再び寝台に押し付けようと肩を掴む。
その接近を機に、側頭部で大きく女の額を突く。
鈍い音と共に痛みの声が上がり、女は視界を奪われ、よろけた。
男は無理にでもシリンジを打とうと、それを右手に、ターシャに掴みかかる。
見定めたターシャは、その左手に有りっ丈の力を込めて噛みいついた。
犬歯も突き刺さる程の勢いは、激痛の悲鳴を部屋中に轟かせる。
彼女は恐怖に目を瞑りながら、そのまま放さず深々と歯を喰い込ませた。
男は耐えきれず彼女を殴打したが、その反動で傷が広がり、激しい流血を起こす。
解放されたターシャは、すぐさま寝台から飛び降りる。
だが、女がしつこくその腕を取った。
逃がさないと騒ぎ立てながら、血相を変えている。
その腹を思い切り蹴り飛ばし、転倒させた。
「おい!止まれ!」
痛みに汗を滲ませながらも男は叫び、ターシャに接近。
彼女は身を瞬時に躱すが、部屋から出る隙を逃してしまう。
狭い部屋の中で逃げ回る最中、目を走らせたのは周囲に立つステンレス棚に並ぶ、大量の薬品。
背後にもそれは立っており、咄嗟にガラスの引き戸を開ける。
そのまま流れる様に搔き出し、床一面に叩きつけられていった。
多くが瓶に入っており、中の薬がガラス片と共に広々と飛散する。
更に1つボトルを取り出すと、手早く開けて男に吹っ掛けた。
「止めなさいよ!」
女は腹を抑え、苦しみに満ちた顔でターシャの行動に怒鳴る。
「どっちが!
言ったでしょ!止めて欲しけりゃ、さっさと降参するのね!
あんな奴の言う事なんか、聞くもんじゃないわ!
あんた達も目ぇ覚ましなさい!」
「お前にそんな事して何になる!」
男は負傷した左手を垂らしながら、ターシャを捕まえようと接近する。
男を横目に、ターシャは壁に立てかけられたフローリングワイパーを発見。
咄嗟にそれを手にし、男を柄で叩きつけようとした。
だが、必死に攻撃を繰り返す全身は震えている。
力は然程出ず、柄を掴まれてしまった。
「お前が諦めろ!これこそ危険行為だ!」
「先に手出しして殺そうとしたのはそっちでしょ!」
そこへ、女が腹の激痛に蹲りながらも力を振り絞り、ターシャの左足に飛び掛かる。
ターシャは上手くバランスを保ち、転倒を免れた。
そして、掴まれたままの左足を解放すべく、女の手を踏みつける。
悲鳴と共に手が解け、男に両腕で捕まりそうになるところを、反射的にしゃがんで躱した。
そのまま腰を低くして駆け、更に薬品棚からそれらを打ち撒いていく。
目前の最悪な光景に、2人は目を見開いて慌てた。
その様子からして、リスクがあるのか。
ターシャは彼等を鋭く睨みつけ、男に追い付かれる前に部屋から何とか脱出に成功する。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。