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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#10. Tracking 再回収
138/189

[20]



※約1700字でお送りします。







「やぁトップ。

ポケットのそれ、慌てて作っただろう。

衝撃が強過ぎて、このザマだ」




ルークは電流により焦げた右肘を見せながら、ヘンリーを真っ直ぐ見ている。

彼は数秒その姿を見てから、外に目を逸らした。




そこから射し込む微かな陽光を受け、普段殆ど黒い瞳は瞬時、ブルーブラックに光る。

何処を見る訳でも無く、思い出した何かを見て、零した。




「………ああ…悪いな…」




「俺を活動的にしたのはトップなのに、そりゃ無いな。

まぁいいよ。困らせたね。

だってあの子が色々教えてくれるって言うからさ。

お陰で話す事が膨大にある。早く上がろう。

ねぇ着替えある?

ああ、そうだ。イルカ居なかったよ」




あちこちに視線を向けながら、滑らかで自然な発言をつらつらと零し、ドアまで移動する彼。

白衣の部下達は発言やその光景に、目を見開く。




「イルカ!?」




彼等の隣に居たイーサンは、呑気な報告に小さく笑った。

レイシャは密かに頬を拭いながら、ルークに向かっていく。




ヘンリーは彼を見向きもせず、斜め下を見たまま僅かに微笑んだ。




「………あれは…気まぐれだ………先に行ってろ…」




ルークは円らな目を瞬かせると、レイシャと共に奥へ消えた。








 ターシャはアマンダと共に顔を上げており、組織とルークのやり取りを見ていた。




彼が颯爽と姿を消すと、アマンダの手がそっと放れ、先に下船していく。

その先にはイーサンがおり、彼女は彼の近くで立ち止まった。

ターシャはそれを見て、やっとガレージに上がる。








 その姿に、上層部2人よりも共に居た白衣の部下達が目を疑った。




「また来るとはね。

まさかここで働く気にでもなった?」




よく見ると、覚醒した際に追って来た2人だ。

彼等を睨むと、ターシャは堂々と接近する。




「あんた達も、この場所も、終わらせに来た。

自首するなら今の内よ。

しないのなら、そうしなかった事を後悔させてやる」




部下2人は呆れた顔をする。

そこに、イーサンの近くに居たアマンダが近付いた。




「ターシャ何する気?何を考えてるの?」




「怒らせた事は謝る……

でも、ここでの事は許せないし、あってはならない」




力強い眼差しをアマンダに向けると、彼女が何かを言い出す前にその肩を押し、脇へ寄せた。








 その先に立つのは、ヘンリーとイーサン。

しかしターシャが切り出す直前、目に飛び込んだ物に度肝を抜かれる。

血の気が引き、1歩、また1歩と勝手に後退った。

そこにはヘンリーの、晒されたままの機械の腕があった。








 ターシャは思い出す。

この男に掴まれていた時の感触は非常に硬く、冷たかった。

見るに堪えない恐ろしいそれに、つい目を大きく逸らす。

それを見た女の部下がターシャの顎を掴み、強引に目を合わせてきた。




「そういうの、止めるのね」




静かに、低い声で言った。

顎を掴む手は、目と共に微かに震えている。








 ヘンリーが踵を返した時、ターシャは部下の顎を掴む手を振り払い、彼を呼び止めた。




「全部あんたの指示でしょ!

こんな事が正しい訳ない!もう止めて!」




彼が足を止めると、肩越しに僅かに振り返る。

ターシャは接近し、鋭利な目を向けた。

しかし、彼は表情を変えず言葉を待ち続けている。








 部下2人が彼女の腕を掴み、それ以上接近させまいと抑制した。

それでも彼女は怯まず、続ける。




「あんた、もしかして有名人じゃないの?

だとすればこんな行い、これまでの人や、あんた自身が築き上げてきたものを汚し、壊してる!

それは家族や知人が悲しむ事でしょ!?

正しい事の分別を、ちゃんとつけなさいよ!」




「おい止め




イーサンが咄嗟に彼女を止めようとするが、ヘンリーは彼の腕を掴み、止めた。

黒い背は未だ、無言のまま言葉を聞き続けている。




「あんた達がしてる事は、人としての行いではない!

人として守るべき事を、知らない筈が無いでしょ!

もっと正しい事に、能力を使うべきじゃなかったの!?」




背後で腕を掴まれながら、更に前のめりになる。




「亡くなった人をコントロールして、ここでの事や、自分達の事を良く思わせようったって、そうはいかない!

皆は、あんた達の玩具じゃない!」




部下達の焦燥が、腕から伝わって来る。

彼等は、彼女を抑える力が増す中、背を向け黙り続けるヘンリーを心配そうに見つめていた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(12/5完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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