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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#10. Tracking 再回収
137/189

[19]




 ターシャが乗るボートはガレージに着いた。

彼女は助手席の横に座り込んだまま、前方を睨む。






 ボートが停まると、ビルが素早く下船。

ガレージには上層部、ボート脇には白衣の部下3人。

ゼロ2体が担架を横に待機していた。






挿絵(By みてみん)





 ビルは、静かに立つヘンリーに、変換機器を渡す。




「コンプリートしていない。

半分も到達しない内に弾かれた」




その場に居る者は、ビルに目を丸くさせた。

しかし、どこかで予想をしていた結果か。

ヘンリーは表情を変えず小さく頷き、それを胸ポケットに仕舞う。

ビルはその後、ガレージを去った。








 ボートの無惨な姿と、未だ繰り広げられる後方のボートでの取っ組み合いに、部下達は唖然としている。




「こりゃ酷い兄弟喧嘩だ…」




イーサンが呆れた表情で呟いた横で、レイシャが暴れる新型を食い入る様に見ている。








 プラットフォームから下半身が沈んだルーク。

水没するまいとしがみ付く彼の隙を見たジェレクは、床に伸びるルークの腕を掴んだ。

それに合わさる様に、ルークはジェレクの腕を掴み返すと、そのまま大きく彼を引き、あっさり海中へ落としてやった。




「俺の勝ちかな」




しかし、ジェレクは無言で水中から飛び出すや否や、油断するルークを海中に引き摺り落とした。

ジェレクはそのままプラットフォームに上がり、颯爽とガレージを後にする。




「あーあーあーもう、直したとこだってのに!」




端に居た部下の1人が、つい面倒を漏らしながら彼を追った。








 レアールがアップにした髪を解き、風に靡かせながらレイシャの前に来る。




「無傷で何よりよ」



「当然よ。争いは男に任せるのが一番」




発言に合わせ、彼女は口角を上げた。

イーサンは彼女達に呆れ、顔を引き攣らせる。








 ルークが停止していた場合に備えていたゼロは、その任務を特定できず、自ら去っていった。

それに合わせ、レアールもその場を後にする。








 アマンダはコックピットから出ると、ターシャを立たせようと手を差し出した。

しかし、ターシャは俯き、動かない。

先には、上層部が居る。

その再会に、短く、強く息を吐いた。




 酷い葛藤がある。

目の前に立つ彼女の姿も、耳にしてきたルークの言葉も、揺るがすものはある。

しかし、彼等を含めここに居る故人は、組織によって作られたアンドロイド。

その行いは罪であり、成敗されるべきである。

ターシャの考えは、変わらなかった。




 到着してから1分程間を置くと、アマンダの手を取って立ち上がる。




 アマンダは、それからも未だ動かず佇む彼女を眺める。

もう片方の手には拳が握られ、体温は少々高い。

先程よりも鼓動は落ち着いているが、まだ僅かに速い。

怒りか、焦燥か。

アマンダはそれを解析すると、ターシャと同じ様に下を向いた。








 そんな2人を横に、ずぶ濡れになって顔を歪ませるルークが下船する。

彼が進む真正面には、レイシャが立っていた。




彼女は口を小さく開けたまま瞼を失っている。

彼女の頭の中では、ジェレクと争う最中に聞こえてきた彼の声が、ずっと繰り返されていた。

ルークは何も発言しない彼女に、首を傾げ



「ははっ!何だ?その顔」



「!?」



彼女のグレーの瞳は大きくなる。

微かにぼやけた視界に、真っ直ぐ見つめてくるルークがいる。

彼はまた、首を傾げた。



「ああ、感動か。

発見したり想像が叶うと、補佐官はそんな顔をする」



ルークはふと微笑を浮かべると、ヘンリーに向かっていく。

レイシャは変わらず、それに置いていかれていた。






部下達はただ、System Real/Rayに釘付けになる。

ルークが次に見つめているのはヘンリー。




それをただ眺めるレイシャだが、2人の会話どころか、今は周囲の物音1つ聞こえない。

突如掘り起こされたあらゆる記憶の中で、静かに、頬に1滴が細く伝った。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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