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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#10. Tracking 再回収
132/189

[14]




 藍色の海は光の飛沫を上げ、強い風に波打っている。

海面に太い亀裂を入れながら、レアールはボートを飛ばした。

直に、先立ったボートが小さく現れる。






 ターシャはシートに座り、声を殺して蹲っていた。

隣にはアマンダ、向かいにはルークが無言で腰掛けている。




 触れるなと言っておきながら、ターシャは今、アマンダの手を握りながら思い出していた。

自分が生きる場所では、組織が居ないとアンドロイドは維持できない。

連れ出しても、できる事は無い。

島へ辿り着くまでの間、ルークが言っていた事が過る。

更にそこへ、アマンダが怒鳴った、限られた時間という言葉が合わさる。






 アマンダは未だ、手を握られたまま話す事をせず、進行方向を眺めていた。

背凭れにずっしりと身を預けた姿勢は、疲れ、気持ちが重く沈んでいる様に見える。






 片や、あんなに多弁だったルークも、縁に片肘を掛けた姿勢で、足元に視線を落としている。

それは明らかに元気が無く、見てきたものを思い返している様だ。






 エンジンと振動の音だけの空間。

それを、ジェレクの歩行音が切った。




ボートを自動運転に切り替えると、アマンダに視線を向ける。

彼女はふと彼を振り返ると、咄嗟にルークを見た。




 ジェレクは、落ち込んで動かない彼に近付いていくと、素早く機械針を胸ポケットから抜き取る。

保安官達には、もう1つ任務があった。






 下を向いていたルークだが、当然気配も行いも分かっているのか。

彼をそっと見上げると、首を傾げる。



「で、次に君が俺を止めるのか。

何でだ?そんな指示は出てないだろう?」



それに対するレスポンスは無い。

ジェレクはボートの後方に目を向ける。

間も無くビルが追い付くのを見て、任務実行に移った。

穏やかに着席しているルークだが、既に動きを見抜いているのか。






 ジェレクは彼の胸倉を掴み、引き寄せる。

合わせて素直に立たされてやったルークだが、左から鋭く光る機械針が耳に向かて来る手前、左手首で阻止。

互いの手が押し合う事で、軋み音が立ち始める。



「ルーク!?」



ターシャの慌てる声に、アマンダは彼女の手を引いて助手席へ誘導した。

その後、コックピットの傍で彼等を見る。



「ターシャ座ってて。絶対後ろに出ないで」






 ルークは空いた右手でジェレクの左肩を掴み、引き離そうと体重をかけていく。




「いいよ。何だか妙な感じだったしね。

動いていた方が、思い出さずに済む。

それに、今ここで先に試しておけば、後の実験で効率がいい」




そう言って悪戯に笑みを浮かべる彼は、まるで憂さ晴らしに喧嘩でもしようという感覚か。

そんな彼にジワジワと押されていくジェレクだが、体勢を整え、押し返し始める。




 ジェレクは隙を見て、ルークの腹を1発蹴った。

鈍い音と共に、ルークは床に激しく転倒。




ジェレクはサングラスを仕舞うと彼に跨る。

左手で彼の髪を引っ掴み、その首を激しく右に向けさせ、機械針でシャットダウンの穴を狙った。

しかし、そう容易く決まる訳がない。




ルークは首を横に向けられたままだが、彼の機械針を握る右手を掴み、阻止してみせた。

首から軋み音を上げながら、正面を向き始める。








 レアールは、ボートを並走する形で接近させる。

後方スペースでは、ビルが船縁に片足を乗せ、屋根を掴んで乗り移る準備をしていた。








 ルークはジェレクの両手首を掴み、更に抵抗する。

ジェレクの手首から軋み音がし始めた。




 真横に向けられた首と、掴んだ手にも更に力が加わり、ルークの顔はやっと正面を向く。

ジェレクの腕から更に骨格の音が立つ。




 ジェレクは破壊を回避すべく、彼を振り解き、立ち上がった。

ルークはそれに合わせて身を起こし、しゃがんだ姿勢で彼を上目で睨む。




 ジェレクが再び掴みかかろうとする直前、ルークは中央に据えられたテーブルの奥へ回り込んだ。

先程まで、ターシャとアマンダが座っていた位置だ。




 彼はジェレクに目を向けたまま、ジワジワと横歩きし、出方を窺う。

その動きに合わせ、ジェレクの目も動く。

目を逸らす事無く、右手の機械針は指先で1回転して構えられた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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