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※ご興味があれば
微分・積分・代数の方程式をご覧ください。
※筆記する様子ですので
本人の書き順で羅列してます。
#05. Error 誤搬送 [4]
気分転換や、酷く苛立つ時、思い悩んでいる時、叩き込まれている数多の方程式を連ね続ける。
それをしている時は声も届かなければ、強く揺さぶりでもしない限り接触されている事も気付かない。
こんな事をする理由をレイシャがしつこく尋ねると
形状を変えたり、等号で結ばれていく形が、人間に見えて仕方が無いと言った。
尖っている、丸い、長い、短い、線引きする、組みを作り隔たりを生む。
それらを人間と引っ括める。
式によっては、こういう解という事にしよう、代数的に解けない、或いは解は無いと都合よく表現したりする。
それらの羅列はまるで、人間の思考に終わりが無い様相を表していると言う。
彼はいつだって、それから目を離そうとしなかった。
再び静寂が訪れた時。
右手がデスクを這い、液晶横に立てている用紙とペンに伸びる。
それらは傍にありながら、随分と遠かった。
すると、向こうから颯爽と手元にやって来る。
レイシャがペンを持たせた時、ヘンリーは間を置いてから、それを1回転させた。
震えは治まったのか、落ちる事なく握る。
やがて彼は、慣れた手つきでペンを走らせた。
彼女はイーサンと共に、どこか不安な顔を浮かべながら、式の世界へ籠る彼を見守った。
d y ― d x + P x ( ) y = Q x ( ) P = -1 / x Q x ( ) = 1
作ったものが壊れるように 人もまた 壊れる
y = u v U d v ― d x + V d u ― d x - u v ― x = 1
守る為 得る為ならば 傷付け 壊す事を選ぶ
= U d v ― d x + V d u ― d x - u ― x ( ) = 1
そして真実や 新たな事に辿り着き 再開する
d u ― d x - u ― x = 0 d u ― u = d x ― x
どうしようもなく脆い 人は これを繰り返す
= ∫ d u ― u = ∫ d x ― x = l n u ( ) = l n x ( ) + C
無くなる事のないこれを もう 恐れる事は無い
= l n u ( ) = l n x ( ) + l n k ( ) = l n u ( ) = l n x k ( )
ここに居る皆はもう どこへ行こうと 孤独ではない
=u =x k k x d u ― d x = 1
失くす訳には いかない
= d v = 1 ― k d x ― x = ∫ d v = ∫ 1 ― k d x ― x
どうしても 残っていて欲しい 残したい
=v = l n x ( ) ― k + l n c ( ) = v = l n x c ( ) ― k
彼等は違う まだやれる まだ生きられる
y = u v = k x 1 ― k l n c x ( ) = x l n c x ( )
同じ色に染まりはしたが いや 染めたのだが
n Σ k = 1 k ² = 1 ― 6 n n + 1 ( ) 2 n + 1 ( )
それでも 生きていていい 貫いていい
n Σ k = 1 k ³ - k - 1 ( ) ³ { } = n Σ k = 1 - k - 1 ( ) ³ + k ³ { }
彼等は 真っ直ぐに表現する事を 恐れたりはしない
=- 0 ³ + 1 ³ ( ) + - 1 ³ + 2 ³ ( ) + - 2 ³ + 3 ³ ( ) + ・・・
彼等は変わり 今 遥かに対応できる事がある
+ - n - 1 ( ) ³ + n ³ { } = n³
その逸材達に 時間を与える
n Σ k = 1 k ³ - k - 1 ( ) ³ { }
結局 未だ 守る事がどういう事か 分からない
= n Σ k = 1 k ³ - k ³ - 3 k ² + 3 k - 1 ( ) { }
愛し方も 愛され方も 分からない
= n Σ k = 1 3 k ² - 3 k + 1 ( )
想像してみても 自信はない
=3 n Σ k = 1 k ² - 3 n Σ k = 1 k + n Σ k = 1 1
だけどそれでも 考えろ 俺だからできる事を
=3 n Σ k = 1 k ² - 3・1 ― 2 n n + 1 ( ) + n
どこまでも守るには どうすればいいのか
=3 n Σ k = 1 k ² = 3 ― 2 n n + 1 ( ) + n = n ³
悉く恨めしい脳だが 徹底的に使ってやる
↔3 n Σ k = 1 k ² = n ³ + 3 ― 2 n ² + 1 ― 2 n
俺はいつだってトリガーだ そうだろう
↔3 n Σ k = 1 k ² 1 ― 2 n 2 n ² + 3 n + 1 ( )
ならばそれらしく 決めてやる 導いてみせる
∴ n Σ k = 1 k ² = 1 ― 6 n n + 1 ( ) 2 n + 1 ( )
俺にとっての 本当の最高の利益を 残してみせる
走るペンが止まった時、用紙とペン立てが置かれた箇所に目を向ける。
そこには、微かな筆記の振動で、水が張ったグラスに揺れる1輪の白いジニアがあった。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。