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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#02. Loading 死別
13/189

[3]





 エレベーターはそのまま5階へ下った。




そこは採用されたデザインを実現させる製作部。

しかし彼女は、その階で停止したという事にも気付かず、険しい表情で外を睨んでいた。




その目は徐々に怒りに染まり、手が当てられていたガラスは曇り始め、震える。

そして髪を掴み、今にも毟りそうになる。

息も徐々に上がり、街の画は消え、親友の顔が大きく浮かんだ。



 そこへ誰かの手が肩に触れた。


「ターシャ?」


「!?」


彼女は咄嗟にその手を大きく振り解き、飛び上がる。

衝動でエレベーターが大きく揺れた。




「……どうした…」


製作部の男性スタッフが心配し、中まで入って来ていた。

彼女は息切れしながら目を大きく見開き、動揺する。




「ごめんなさい……」


恐ろしく疲弊し汗ばむ姿に彼は眉を顰め、そっとフロアへ導いた。





 引かれる手によろめきながら、やっと真っ直ぐ立つ。

部署の空気が痛すぎて顔を上げられない。

しかし、彼は気さくに笑いかけた。



「気にするな。君は8階に行ったんじゃないのか?」



そこでやっと気付く自分にげんなりする。

彼女はいつも明るく、活発な性格だった。

発想力が豊かで、最年少なりの感覚を活かし、作品をデザインし続けてきた。

だが、そんな自分は今はどこにも居ない。



「ごめんなさい……」



視線を足元に、また同じ言葉が出る。





 「ターシャ」




製作を一時中断させてまで声をかけにやって来たのは、その部署で一番仲が良い女性スタッフ。



「久しぶりじゃない、心配してたのよ。

テキストの返事すらくれないんだから…」


「………ごめん…」


目は勝手に泳ぎ、目の前の2人の顔を見れない。


「復帰、早かったんじゃないのか」



何も答えられないまま、不意に腕時計に目をやる。

持ち場に戻るまであと5分を切っている事に、今度は慌て始めた。



「も、もう行かなきゃ!ありがとう!」



再びエレベーターに駆け込み8階のボタンを押すと、呆気なくその場を去って行く。




 上昇する数字をただ、取り残された2人は眺めた。


「噂通りだな」


彼は呟くと、下の階へ向かう為再びエレベーターを呼ぶ。

隣に居た彼女は、未だターシャから返事が来ていないメッセージボックスを開いたまま、心配の表情を浮かべた。





 8階へ着くなり、オフィスへ一目散に走る。

駆け抜けた拍子に、廊下の壁に張り出されたデザインの原紙の隅が靡いた。



 辿り着いた先のドアを開けると、画板に張った用紙に鉛筆を走らせる音、キーボードを叩く音、印刷機の音が一気に押し寄せた。



「多いわね最近」


コーヒーを片手に副部長が声をかけてきた。


「わざわざ製作部へ引き返して、ご用事?」


「………ごめんなさい…」


副部長の手が、上下する彼女の肩に伸びた。


「しっかりなさい」


そう言い残して、デスクに戻って行く。

その言葉が圧し掛かる中、しばらく棒立ちになり、オフィスの風景を目だけで見渡した。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[良い点] あらすじに書かれていた「彼女」の話になりましたね。ここからいよいよ物語が幕をあげるかんじがして、ワクワク読み進めております。 引き続き、楽しみにいたしておりますଘ(੭ˊ꒳ˋ)੭✧
[一言] むむ……彼女の失った親友がもしかして……? なんて推測してますが…… 続きが楽しみです。
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