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その光景を桟橋の元から見ていたロンが、慌てて駆け寄り、心配してターシャの肩に触れる。
「ターシャ、さっきの言い方は本当に良かったのか?
友達にしては、随分と言葉が鋭かったが?」
ルークはロンが話す最中、僅かに肩越しに振り返り、2人を見る。
「触るなと言われて傷付かない人はいない。
彼女は今ショックだろう。
1人1人、繋がりがある。
彼女のご両親も、きっと娘がそんな風に言われれば辛いんじゃないか。
俺はこの僅かな時間に出会って、背景も何も全く知らないが、それでも今のは、例えどんな事情があろうとも見ていて気の毒だ」
「いいわよおじさん…
向こうには話しておくわ……それでいいでしょ」
アマンダは顔を背けたまま、船縁に顎肘を付いて重く呟く。
言い終わりには、付いていた手で船縁に力無く音を立てた。
端のビルが背を向けかけ、乗船しようと足を掛ける。
それにロンが驚き、待てと咄嗟に放った時だった。
ボートと2人の間を、瞬時に風が切る。
ボートは大きく揺れ、中で騒音が響いた。
どういう訳か、ターシャの体は勝手にアマンダに飛び付き、震えている。
心境が整わないまま、目を左右させ、戸惑った。
急に背を向けられた事や、2人が怒っているという事が、怖くなってしまった。
言わされている。
そうだとしても、どうなのか。
彼女は本当に優しく、人を想う性格だった。
親友である自分を、大切にしてくれた。
散々、彼女ではないと言い聞かせた筈だというのに。
目の前に座り、寂しげな様子を出す彼女が、いつか何かで傷付いた時の本人に見えてならなかった。
本当はもっと一緒に居られた筈。
それが胸に刺さっている。
自分の不注意で失った親友。
酷い別れ方にショックが大きく、葬儀にも出ていない。
最後に見た顔は、大怪我をして動けなくなった、血だらけの彼女だ。
あの地で最悪な目に遭っていながら、この衝動は一体何か。
ターシャは突っ伏し、唇を噛む。
体は、アマンダから離れない。
その場は、酷く重い空気を漂わせていた。
陽光は水面に眩い光を立たせ、美しくボートや桟橋を照らし続けている。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。