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#10. Tracking 再回収 [5]
コックピットのジェレクが立ち上がり、やって来る。
サングラス越しにルークを分析した後
ターシャに流し目を向けた。
「てめぇは大したもんだな」
ジェレクはターシャを睨むと、徐々にアマンダに視線を向ける。
「てめぇが言うダチってのがどんなもんか知らねぇがな。
そいつはてめぇにそんな事言われても、未だに見てる。
どんなにてめぇが目を逸らしても、そいつは目を離さずツラ見て話そうと、聞こうとしてる。
最後まで」
不良っぽい口調に乗せられた言葉を聞いても、ターシャは目を僅かに痙攣させ、逸らすだけだった。
彼は視界から彼女を掻っ切り、ルークを振り返る。
「こいつもまた、そうだ。
しかし黙って聞いてりゃあ、零されたのは組織の否定。
言い換えりゃあそれは、家族や仲間、知り合いを否定されたって事じゃん。
てめぇはそうされても平気かは知らねぇが、こいつはそれに衝撃を受けた」
「でも!それだって結局
「どうせ普通じゃないし、歪んでるんでしょ!
でも私達は、一緒にいられる筈だった!もっとね!
今、この限られた時間で、同じ様に生きたいと思っちゃ、いけない!?」
アマンダは突如、その場の空気を轟かせる程の怒鳴り声を上げた。
真っ直ぐターシャを見る目は、力強さを感じる。
余韻が漂う中、ターシャは怯んだ。
結局そうさせられているだけだろうと言いかけていた事など、拭われてしまう。
ルークは、怒る彼女を食い入る様に見ていた。
限られた時間。
ここに居る皆はアンドロイドだというのに、彼女は何故、そんな事を言うのか。
彼女と喧嘩した経験も勿論あるが、まるでその時を鮮明に思い出させる。
ターシャの視界は、しっとりと霞んでいった。
暫しの間、その場は波と桟橋に触れるボートの音だけになる。
先程まで温かかった潮風も、不思議と今は冷たい。
ルークは2人から目を落とすと、先程震えた右手を眺める。
だが、ターシャにその事は何も言わず、静かに背を向けた。
ターシャは彼に目を震わせ、アマンダを徐々に振り返る。
彼女は、言葉を待つ様にターシャを見つめていた。
だが、何も言ってはもらえないと見て、とうとう顔を大きく背け、乗船する。
その足取りは乱暴で、1歩1歩に力が入り、怒りを醸し出す。
船内に入ると、奥のシートに激しく座り、手足を組むと完全にそっぽを向いた。
距離を酷く感じたターシャの鼓動は高まり、寂寥はみるみる襲い掛かった。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。