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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#10. Tracking 再回収
121/189

[3]




 レアールは、2人が乗って来たボートの回収をしに、颯爽と倉庫の方へ外れていった。




「おじさん、警察に電話して!

こいつらは偽物!ロボットなのよ!」



アマンダは腕の中で必死になる彼女を体から少し離し、その様子を眺める。

何かをする事もなければ、言う事もなく、そっと俯いた。

ターシャの両肩を掴んだままの手は、どこか寂しげに撫で始める。






 ロンはターシャを見て、目を張った。

その表情は、大層驚いている。

じわじわと歪ませ、口をあんぐり開けながら、ビルを振り返った。



「あんたはロボット呼ばわりされるのか?」



ビルもまた落ち着いており、サングラスを服で磨きながらターシャを振り返ると、それを着用しては口を開く。



「ほう。そうか。

だとすりゃあ上等な出来だろう」



腰に手をやる動きは、少々強い。

ロンに手を差し出しながら、顔を研究所や彼に向けながら続ける。



「お宅も使ってみるか?

あちらさんもだが、近頃は、この近辺の地域すら、人型ロボットを取り入れている様だが?

なら俺を採用すればいいものを。

訓練を受けて長いしな。

各段にスペックが高いぞ。

あちらさんで使われている、ワンパターンな雑用ロボットよりもな。

近日中に、最先端技術に纏わる授賞式があるかを探してるが、知らないか?

立候補したいところなんだが」



半ば早口にも思えるそれは、どこか面倒くさそうにも取れる。

話す最中に広げていた両腕を、最後は力無く両脇に落とした。

首は、適当に斜め上を向けながら、横に振っている。

ロンは鼻で息を吐くと、否定するように無言で宙を数回煽いだ。



「そりゃご苦労なこった。

悪いが、うちはその予定の確認よりも、この島の知名度を上げるのに忙しくてな。

試しに、あんたを取り入れりゃあそれが叶うか?

ロボットの使用はまだ、視野に入れた事は無い」



ビルは爪先で桟橋を叩きながら腕組みすると、接近してくるルークを振り返る。



「ああ最大限を尽くす。ジョークはこの辺に。

騒ぎ立てて悪かったな」



その真正面をルークが通過し、ジェレクが彼に合流すると、共にボートに向かう。




「やぁロン、悪いけど服はまだ借りておくよ。

あっちでやる事が済んだら、また返しに来る」



ルークの顔は実に爽やかで、愛想よく微笑んでいる。

彼は悠々と桟橋を進み、自然に乗船するではないか。

ロンは円らな目を瞬かせ、口を尖らせて彼の背を見送ると、またビルを見る。




「まぁ…俺達は治験や研究所の事は分からん。

でも、向こうの被験者だとはいえ落ち着かない様だし、聞いてやってもらえないか?」



ロンはビルに肩を竦めながら、時折、アマンダに宥められている様子のターシャに目を往復させていた。









 レアールは、倉庫の外に停められていた拠点のボートに目を這わす。

丁寧に応急処置が施された所を確認した。



「あら。前よりクールだわ。

貴方達、腕が良いのねぇ」



その横には、彼女に釘付けになっている作業員達。

ただボートを取りに現れただけの女性警官に魅力を感じ、ヘラヘラしている。



「まだやれるぜ!

もうちょっとゆっくりして行けばいいのに、なぁ!」



レアールはコックピットへ乗り込んでいく。



「ご苦労様。十分よ。

こちらが一仕事させたのだから、貴方達が寛ぐといいわ。

手間をかけたわねぇ」



エンジンをかけ、着用していた眼鏡を外しながら彼等を振り返る。

そして、口元だけで微笑んで見せた。

顔の皮膚がほぼ入れ替わった事を思わせない程、美貌を放っている。



「おい!誰もそんな事言ってくれねぇよ!

あんただけだ!」



彼女は、馬鹿騒ぎする彼等に僅かに顔を伏せ、先程よりも口角を上げる。

それは、艶めかしい笑みだった。



「そう。ここの女性は、見る目が無いのかしら。

私は、好きよ」



どこか怪しさを見せる表情が、彼女の最後の発言と上手く合わさり、彼等は見惚れた。

それを他所に、ボートにエンジンが入る。

彼女は、仲間がいる桟橋へ向かった。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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