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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#10. Tracking 再回収
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[1]



#09. Saving 架け橋の島


「沿岸警備隊が来てる。オーナーに会わせろって」

こんな偶然があるのだろうか。

出て行った2人が見えなくなるまで眺める最中、少々安心した。

背後にある離れた建屋からは、明るく人を迎え入れるエバの声が小さく聞こえた。







 「いらっしゃい!

あらまあ可愛い警察さんだねぇ!」



ふとエバの元に現れたのは、ココナッツブラウンの長髪をヘアクリップで簡単に纏め上げた、水色シャツに黒ベストを着用した女警官だった。



「探してる2人がいるんだけど、知らないかしら。

私と同じくらいの」



高くて明るい、親しみやすい声にルークは席を立ち、振り返る。



「おやおや。

こっちも色々あって助けてもらいたい所なんだけどねぇ。

その坊やと、あの子が大変みたいなんだよ」



そう言いながらエバは玄関に向かうと、表から少々離れた所で背を向けて立つターシャを呼んだ。






 ルークは静かに、女警官と互いに見つめ合っている。

そこへターシャは飛び込んだ。



「…………嘘っ…」



目の前に立つ女警官が、声に振り返る。

ターシャは、喉が締め付けられた。



「ターシャ!良かった、会えて!

ルークに集中しちゃって気付かなかった」



「ひゃああっ!」



堪らず叫び、咄嗟に踵を返すと躓いた。

恐怖のあまり、その場から疾走する。

アマンダは入り口を飛び出すと、慌てて彼女を追った。






 良かった、会えて。




その言い方は、本人だった。

だけど違う。もう彼女ではない。

彼女ではないのだ。

走りながらそれを刷り込み続けるが、恐ろしくリアルな瞬間は、脳裏に焼き付いて離れない。






 浜に向かって疾走し続け、林の終わりまで辿り着く。

飛び出したそこにかかる、薄い陽光のベールの先の光景に、凍て付いた。

桟橋に居るのは、間違いなくあの地でレザーを着ていた男。

端からもう1体も、そこに合流していく。

ターシャは堪らず、彼等と対面するロンに叫んだ。




「そいつ等の話、聞かないで!おじさん!」



「ター…」



声に咄嗟に振り向いたロンが言い掛ける中、ターシャはアマンダに追い付かれた。

そっと肩を掴まれると対面姿勢になり、抱き締められる。 






 ロンは何気ない光景に肩を竦め、あれは知り合いかと呟いた。

それを共に眺めていたジェレクが補足する。



「親友だ」



「へぇ!そりゃまた!」



彼はそう言ってから前の警官2人を改めて見ると、念の為の確認をした。



「警察さん、悪いが身分証見せてくれ」



ビルはサングラスを外すと、無言で手帳を見せる。

ジェレクも横から、それを摘んで突き出した。

雑な持ち方に風で微かに靡いている。




ビルは瞬時にそれを掻っ攫うと、流れで彼のミラーサングラスも取った。

そのまま彼の手の甲に2つを叩きつけると、ジェレクは持ち方を修正する。



「失礼」



ビルはジェレクを睨んでから、低い声でロンに告げる。



「あ、いや。もういいさ」



その場もまた、実に自然だった。



「何やらあそこの、何だ、海洋研究所で困り事でもあるみたいでな。

死んだ人をロボットにしてる?とかで。

警察に連絡しろと。

急過ぎる話でな。

何が何だか分からなくなってたんだ」



「そこからの脱走者で、連れて来るようにとの依頼だ。

被験者が居なくなり、何なら向こうが困ってる。

仕事にならない、と」






 ターシャは変化を見せる彼女に必死に抵抗をするが、離れない。

硬過ぎる体。冷た過ぎる肌。

強引な抱擁に、再会の喜びや熱いものなど何も感じなかった。




 その時ふと、彼女の髪から香りが漂う。

それに抵抗する動きが止まり、アップスタイルになった髪型をふと見上げた。

こめかみに残された髪に目を這わせていくと、手に取って眺める。

そこには艶があり、自然な髪だった。




「化粧メーカーのお姉さんが、新しいスプレーをくれたの。

あ、ねぇデザイン順調?何の企画してるの?」



「は!?」



耳を疑い、髪を咄嗟に手放す。

アマンダはターシャの顔を覗き込んだ。



「賞を貰った事があったんだっけ?

教えてもらったの。

補佐官は遅いのよね。

大事な事なのに、早く教えてくれればいいのに。

友達も呼んで、お祝いしたりするの?

私も早く、馴染めるようになればいいんだけど…」



「そんな…有り得ないっ!」



ターシャは彼女の体を必死に押し返すと、抱擁する腕が少し緩んだ。



「ごめん、力が強過ぎた。大丈夫?」



腕は緩んだとは言え、解放はされない。

ターシャは怒りに手を震わせ、閉じた目に力を入れた。

初対面の時よりも、アマンダに近付いている。

抱擁する中、密着する頬。

視線を彼女の首後ろにやれば、薄っすらとホクロまである。




それでも、彼女は作り物。

こんな事はあってはならないと、言い聞かせ続けた。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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